ねこっかわいがり・1(※18禁) カイジに猫耳が生える話 夢オチ

 深い眠りの中、突然、胸の辺りがぐう、と重くなって、アカギは目を覚ました。
「アカギ、いい加減起きろっ……! もう昼だぞっ……!」
 聞きなれた声が上から降ってくる。
 目覚めたばかりの、ぼんやりした視界に映るのは、胸の上に跨がる恋人の姿。
 どうやら今日は、珍しく寝過ごしてしまったらしい。
 しかし、なんだって今日に限って、こんな妙な起こし方を?
 全体重をかけられている胸がとにかく重く、アカギは文句を言ってやろうと口を開き、そのまま硬直した。

「おはよう」
 少しだけ笑って挨拶する恋人の頭に、妙なものがついていたのだ。
「カイジさん、それは……?」
 カイジは一瞬、眉を寄せたが、『それ』がなにを示しているのかわかると、頭についた三角の、黒い獣耳を手で触って、ますます不審そうな顔でアカギを見た。
「? これが、どうかしたか……?」
『こんなものを気にするお前の方がおかしい』とでも言いたげなカイジの態度に、アカギはいろいろ考えた挙げ句、問いかけた。
「あんたの……新しい趣味……?」
 すると、カイジは今まで見たことないくらいに顔をしかめる。
 それに合わせ、黒い耳が神経質そうにぴくぴくと動いた。

「お前はなにを言ってるんだよ。オレはもともと、こういう姿だっただろ……?」
「……」

 ……もう一回寝直すか、とアカギが目を閉じると、カイジはわぁわぁ喚き始める。
「こら、寝るな! 起きろって!」
 うるせぇな、と舌打ちしかけたアカギの頬に、なにか、ふわりとしたものが触れる。
 思わず目を開くと、黒い毛で覆われた、細く長い物体が頬を撫でていた。
 生き物のように動くそれはカイジの背後、尻の辺りから延びている。
 起き抜けから、どっと疲れた顔になるアカギに、カイジは機嫌よく笑い、黒いしっぽの先を揺らした。













 猫、なのだろう。

 カーペットに這う長いしっぽを見ながら、アカギはそう判断した。

 三角の耳だけでは犬か猫か判断しにくいが、このしっぽは猫と考えてまず間違いない。

 あれだけ騒がしくアカギを叩き起こしておきながら、当の本人は卓袱台に頬杖をつき、ただ暇そうな顔でテレビを見ている。
 行動が気紛れで一貫性がないのも、普段のカイジにはない特徴で、見た目だけでなく性格まで猫っぽくなっているようだった。

 しっぽの先だけが、だるそうに、すこし持ち上がっては、落ち、持ち上がっては、落ち、を繰り返している。
 ときどき、テレビの音量に反応して猫耳がぴくりと動く。
 それらを見るかぎり、カイジに生えたけったいなモノたちは、どうやら、作り物ではないらしい。

 以前からこの姿だった、というカイジの発言は、どうにも信じがたい。
 しかし、あまりにも自然体なカイジの様子を見ているうち、だんだん、そうだったかもしれない、と思いかけている自分に気づいたアカギは、軽く頭を振り、気分転換に出掛けることににした。

「タバコ、買いに行ってくる」
「おー」という気の抜けた返事に送り出され、アカギは外へ出た。




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