apron・8(※18禁)




「……ほらよ、」
 諸事情により人参抜きになってしまった焼きそばを皿に山盛りにして、カイジはしげるの前に置いた。

 あの後、カイジはしばらくの間動けず、しげるはカイジにぐだぐだ文句を言われながら、ほぼひとりで諸々の後片づけをした。
 その後、カイジがようやく動けるようになった頃には、時計の針は午後六時を回っており、激しい運動をしたせいもあってか、ふたりともお腹と背中が今にもくっつきそうだったので、カイジが重い腰を上げて作りかけの焼きそばを完成させたのだ。

「いただきます」
 きちんと手を合わせ、箸を持って焼きそばを口に運ぶしげるを、カイジはじっと見つめる。
 その視線に気づいたしげるが、口いっぱいに詰め込んだ焼きそばをもぐもぐ噛みながらカイジを見た。
「……なに?」
「……いや、」

 ガツガツと中学生らしい食べっぷりを発揮して焼きそばと格闘するしげるは、ごく普通の十三歳にしか見えない。
 だけど……

「なぁ、しげる」
「ん?」
 カイジは訝しげに眉を寄せつつ、ずっと気になっていたことをしげるに問いかける。
「お前さ……本当に『裸エプロン』ってなんなのか、知らなかったのか?」
 八つも年上の野郎をセックスで翻弄し、とても中学生とは思えないような言葉やテクニックを使いまくる。
 そんなしげるが、前回会ったときに『裸エプロン』について無知な反応をしていたことが、カイジにはやはりどうしてもおかしく思えてならないのだ。
 今となっては、もうそんなことどうでもいいのだが、もし、あの無垢な反応が演技だったとしたら、この子供は本当にとんでもないやつだと、カイジはすこし、怯えているのである。
 しげるの返事を待つカイジの、変に身構えたような顔つきを見ながら、しげるはふっと目許を和らげた。
「……焼きそば、おいしいよ。食わないならちょうだい?」
「あぁ? ……食うっつーの……」
 質問をはぐらかされ、カイジは苦い顔で箸を取る。
 カイジが口いっぱいに焼きそばを頬張ったところで、
「……今度は、裸ワイシャツってのやってみたいな」
 しげるがそんなことをしれっと言ったので、カイジは焼きそばを飲み込むタイミングを誤り、大きく噎せ返った。






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