お掃除(※18禁)・1


 無言でスッと差し出されたビールの缶を、体を起こしながらカイジは受け取った。
 プルタブは上がっている。アカギの飲みさしだ。喉を鳴らして飲み下すと、汗のひいた体がさらに冷え、カイジはぶるりと胴震いする。

 缶を持ったまま、目の前に立つアカギの姿を見る。
 事後半刻も経っているのに、アカギは素っ裸のままだ。
 いや、それはカイジとて同じなのだが、問題は男の中心にぶら下がる萎えたモノが、てらてらと濡れ光っていることだった。
 性交が終わると面倒でもすぐに後処理をするカイジとは違い、アカギはそういうことに無頓着である。
 自分の体が性交の残滓で汚れていようが、まるでお構いなし。
 ーーよく平気でいられるよな。オレだったらザーメンまみれのままのチンポなんざ、気色悪くてしょうがねえ。
 そんなことを思いながら、カイジが白っぽい体液を纏わりつかせたままの陰茎を眺めていると、視線に気づいたアカギが「どうしたの」と尋ねてきた。
「いや……、お前それ、ちゃんと拭いとけよ。そのまま座ったら、床が汚れるだろうが」
 カイジに言われ、アカギは己の陰茎に視線を落とす。
 それから、なにを思ったか、ベッドに座るカイジの前に、腰をずいと突き出した。
「あんたが綺麗にしてくれよ」
「……」
 ビールの缶を口に運びかけたまま、カイジは動きを止める。
 アカギは緩やかに口角をつりあげていて、その表情でアカギが大して本気ではなく、戯れに自分を揶揄うつもりでこんなことを言い出したのだということがカイジにはわかった。
 さてどう返してやろうかと、間近にあるアカギのイチモツを見ながらカイジは考える。

 抜けるような白い肌よりも、やや色素の濃いアカギの陰茎。
 白濁した粘液で濡れそぼったそれは、均整の取れた体とはミスマッチで、そのせいで余計に卑猥さが際立っている。

 見つめているうち、カイジは思いがけず、興奮してきた。
 さっきまで目の前の男根によって好き勝手に嬲られ、幾度も欲望を吐き出したはずの体に、ふたたび熱が灯る。
 密かに唾を飲み込みながら、カイジはアカギを見上げた。

 アカギは相変わらず、冷やかすような笑みを浮かべてカイジを見下ろしている。
 恋人が密かに興奮状態にあるなどとは夢にも思っていないような、その余裕の表情を突き崩してやりたくなって、ヘッドボードにビールの缶をそっと置くと、するりとベッドから降りてカイジはアカギの前に跪いた。

「……」
 意外そうな顔をするアカギに気を良くしつつ、カイジは口を薄く開いて、ぱく、とアカギのモノの先端を口に含んだ。
 途端に味蕾を刺激する、冷えた精液の生臭い味。
 わずかに眉を寄せながらも、嫌悪感を興奮が凌駕しているカイジは、さして抵抗なく口淫を開始する。

 ちゅっ、くちゅ、と水音をたてながら亀頭を舐め回し、括れの部分に唇をひっかけながら口内に出し入れする。
 溢れる唾液を飲み込んでしまわないよう注意しながら、ゆっくりと、少しずつ深く咥えこんでいく。
 つるりとなめらかな舌触りの肉が、段々とゴムみたいに硬く張り出してくるのを舌で感じ、カイジは目線を上げる。

 見上げる顔からは、いつの間にか笑みが消えていた。
 上から注がれる、欲望を孕んだ鋭い眼差しに背筋が甘く痺れ、カイジは大きく口を開くと、見せつけるようにしてアカギのモノを根本まで頬張った。

 ぬちゅ、ぬちゅ、といやらしい音をたてながら、カイジはアカギのモノを昂らせていく。
 垂れそうになる唾液をじゅるじゅるとすすり上げながら、口いっぱいの肉塊にしゃぶりつく。
 それは最早フェラチオというより、食事を味わっているかのようだった。

 敏感な裏筋に舌を添わせながら頭を上下に動かすと、アカギが微かなため息をつく。
 アカギの陰茎を汚していた先刻の行為の名残は綺麗さっぱりなくなっているはずなのに、カイジの舌には塩辛いような体液の味が絡みついている。
 それは勃起したアカギ自身の鈴口から分泌される先走りの味で、それを感じ取ったカイジは涙ぐむくらい欲情した。
 夢中でアカギの陰茎に愛撫を施しながら、自らもフェラチオされているかのように、カイジの腰は揺れ、男根は激しく勃起していた。

 しかし、徐々に大胆になっていくカイジの行為を、アカギは急に手で制して止めた。
 とろんと上気した顔で、くちゅ……と音をたてながらカイジは口を開く。
 飲み込みきれなかった唾液が口の端から垂れるのも構わずに、抜け出ていく怒張を名残惜しげに追うように舌を突き出す。
 男を焚きつけるふしだらな仕草に目を眇め、アカギは身を屈めてカイジの耳許で囁いた。
「カイジさん、バックで突きたい……」
 湿った声と微かに荒くなった吐息を耳に受け、カイジはちいさく身を竦めながら、こくりと頷いたのだった。




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