revenge(※18禁)・6





「なぁ、カイジ……こっち向けって」
「…………」

 ベッドの中で壁の方を向いたまま動かなくなってしまったカイジの背に、赤木は苦笑しながら声をかける。
「あんた……最初っからこうするつもりで、『教えてやる』とか言ったんだろ……」
「おいおい……人聞きが悪ぃな」
 いじけたようなカイジの言葉に、赤木は眉を上げた。

 確かに、そういう邪心がまったくなかったと言えば、嘘になる。
 だが、仮にもし、行為の途中でカイジが流れのおかしいことに気づいて、力尽くで形勢を逆転させようとするような気概をみせたなら、赤木はさして抵抗せずにカイジの好きにさせてやろうと、本気で思っていたのだ。
 土壇場で覚醒するカイジの資質。そのわずかな片鱗でも垣間見ることができたのなら、べつに後ろを掘られることになったってまったく構わなかったのに、肉体的な快楽に弱いカイジには、どうやら土台、無理な話だったらしい。

 だが、赤木はがっかりするということはなく、むしろカイジのそういう若々しい淫らさを微笑ましく思いさえしたのだが、すっかり臍を曲げてしまった様子のカイジは、赤木の話に耳を貸そうとすらしない。

「誤解だよ。機嫌直せって……」
 長い髪を避け、項に幾度も口づけながら赤木が掻き口説くと、カイジはわずかに身じろいで、ぼそりと呟いた。
「……今日はオレが、あんたを気持ちよくしてやろうと思ったのに……」
「ん……?」
 その台詞に赤木が首を傾げていると、カイジはちいさな声で続けた。
「いつも……オレばっかめちゃめちゃよくしてもらってるから……、あんたにも同じように気持ちよくなって欲しくて、頑張ろうと思ったのに……」
「……」
「そしたら……あんた、オレをもっと好きになってくれるかなって……」
 赤木は鋭い目を丸くして、それからぷっと吹き出した。
「う……わ、笑うなっ……!!」
 恥ずかしいことを口走ったという自覚があるのか、ぐるりと振り返って真っ赤な顔で怒ってくるカイジに、悪い悪い、と謝りながら、赤木は黒い髪をくしゃくしゃとかき混ぜてやる。

 自分の矜持を取り戻すためにカイジがリベンジなどと言い出したのだと赤木は思っていたのだが、どうやらそれは違ったらしい。
 前回、赤木が抱かれる側に抵抗がないと知ったカイジは、赤木にいつも自分がしてもらっているように気持ちよくなってもらって、より自分を好きになってもらおうと単純に考えて、そんなことを言ったのだ。

 持て余した欲望に突き動かされている状態じゃなければ、カイジはいつだって、赤木のことを第一に考えて行動する。
 今回も、それが例外ではなかったというだけの話だ。

 なかなか笑い止まない赤木にカイジは子供のようにむくれ、ふたたび背を向けようとする。
 肩を掴んでそれを止め、赤木は軽く身を乗り出してカイジの唇を素早く掠め取った。
「……馬鹿。もうこれ以上お前のこと、好きになりようなんざねえよ」
 可愛いことを言ってくれたご褒美に、それに釣り合うくらいのとびきり甘い言葉を囁いてやると、カイジはちょっと固まったあと、
「今の……もっかい……」
 拗ねたように唇を尖らせたまま、横目で赤木を見てそう呟く。

 今の、と心中で呟いたあと、ああ、と納得したように笑い、赤木はカイジの上に覆いかぶさるようにして、その唇にもう一度、やさしくキスしてやった。






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