笑うな(※18禁) ハヤい赤木の話 カイジがひどい


「笑うな」

 息を切らせながら自分を見下ろすカイジにそう言われ、赤木は少しだけ面食らった。
 確かに今の状況を楽しんではいたが、自分が笑っているという自覚がなかったからだ。

 顔を触ってみると、なるほどカイジの言う通り、口角が笑みをかたどっている。自分の上に跨がって腰を振る恋人を見ているうち、無意識に顔がにやついていたらしい。
 思わず苦笑すると、赤木の笑みが深くなるのにあわせ、カイジの眉間に寄っている皺も深くなった。

 自分の拙い動きを笑われているのだと判断したのだろう。確かに、性交に不慣れなカイジを、いつも赤木はついからかってしまうから、カイジが赤木の笑みをそう判断してしまうのも無理はない。

 しかしずいぶん、ネガティブな思考が染み着いてしまったものだと、赤木はさらに苦笑する。

「頑張ってるお前が可愛いからだよ」

 そう言って、宥めるように下から揺すってやると、カイジは背筋を慄かせ、ちいさく声を漏らした。
 赤く染まった目の縁で、カイジは赤木を睨む。
「その、余裕綽々って顔が、気に喰わねえ」
 いじけたようにぼやくカイジに、赤木は更に頬を緩ませる。神域の男にそんな物言いをできるくらいには、カイジも赤木に心安くなっている。
「余裕綽々、か。はは、案外、そうでもないぜ」
 ほら続けな、と指を絡めて握った手を緩く引く。カイジは赤木を睨み下ろしたまま、再び動き始める。

 カイジに杭打っている器官が固さを増すのを感じ、赤木は僅か、目を眇めた。
 カイジに言ったことは冗談ではなく、いつもより早い終わりの訪れを赤木は予感していた。

 カイジの体はどこもかしこも敏感で、触れる部位ごとに上がる声も、体の反応も違う。それらをひとつひとつ暴いてやると、徐々に螺子が弛んでいくように体から力が抜けていく。
 そのくせ、しばらく男を受け入れていなかった中は狭く、どろどろに熱い粘膜が赤木をきつく締め上げる。

 カイジの声、仕草、体。
 久々に味わうそのすべてが赤木を追い立て、ものすごい力で絶頂へと押し上げていく。

「あっ」
 ちょっとしたはずみで弱いところを掠めてしまって、カイジは鼻にかかった声をあげる。
 その拍子に内壁がきつく収縮し、赤木が低く呻いた。

「っうぁ、」
「……えっ? あ……っ」

 次の瞬間、体内で熱いものが爆ぜるのを感じて、カイジは驚き目を見開く。
 赤木は眉を寄せ、痛みをこらえるような顔でカイジを見上げていて、しかしその表情が痛みによるものではないことは、荒くなった吐息から明らかだった。

 暴れていた熱がようやく収まりをみせると、赤木は全身を弛緩させ、長く息を吐いた。
 体の中で勢いを失っていく塊に、カイジはついまじまじと赤木の顔を見てしまう。

 いつもの赤木なら、こんな些細な刺激で達したりはしないのに。

「ほんとに余裕、なかったのかよ」
「だから言ったろ。お前が可愛いからだって」

 赤木がため息まじりに答えると、カイジは目を丸くして、それから、ぷっと吹き出した。

「っ、くく……わ、悪い、笑うつもりじゃ、」
 なかったんだけど、と言いながら、カイジは可笑しそうに笑うのをやめない。
 赤木の余裕が崩れたのが、よっぽど珍しく、そして嬉しいのだろう。

 こんな風に笑われたら、若い男なら気分を害するところだろうが、百戦錬磨、 天空海闊の赤木はそんなことにこだわらない。
 だけれども、カイジが喜ぶかな、と考えて、赤木はわざと、苦々しく渋面をつくってみせる。
 すると案の定、カイジは申し訳なさそうに、だけど心の底から嬉しそうに笑う。

「わ、悪かったって……臍曲げないで下さいよ、……っふ、くくっ……」

 カイジがこんなに笑うのも珍しいと、今度は赤木がカイジの顔をまじまじと見上げる。
 男の上に乗っかったまま、控え目に声をあげて笑うようすは、淫らで、そして甘やかだ。

 カイジの体が笑いに震え、繋いだままの手から赤木に震動が伝わる。
 それは鼓膜を震わせる笑い声とともに、くすぐったいような快さを赤木に与えた。

 つられて笑い出しそうになるのを耐え、赤木は拗ねたような声音を使って言ってやった。

「笑うなよ」





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