Intersection Side-K
――あの男だけはやめておけ。お前に勝てるわけがない。
あの男の話をすると、誰もが口を揃えて言う。
場末の薄汚い雀荘で初めて出会ったときから、その姿が目に焼き付いて離れない。
なにもかも見透かすような黒い瞳は、くだらない金とかプライドなどではなく、おそらくもっと別の次元のものを見ている。
その目に初めて見られたとき、凍えたように体が震えた。
あの瞳に自分が映っている。圧倒的な恐れのなかに、確かにあったのは『喜び』。
突きつけられた刃の美しさに驚嘆するような、危うい喜びだった。
相手がどんなに恐れられているか、どれだけ周りに忠告されても、どうしても目で追ってしまう。
磁石に吸い寄せられる砂鉄のごとく、その圧倒的な力に、本能的に引き寄せられる。
逃れられない。
これが博徒の性なのか?
そうなのかもしれない。
だがもし、そうでないとしたら。
冷たい畏怖の底からわきあがるマグマのような感情に、なにかほかの理由があるのだとしたら。
(本気になる前に、やめねえと)
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