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comune schiena
5
―獄寺視点

突然言った担任の言葉に、眉間に皺が寄るのが自分でもわかった。

「(席替え、だと…?)」

自分が尊敬する十代目の後ろである今の席。
何かあった時でも十代目を守りやすい場所だったというのに。

壇上に立つ担任を睨んでみたものの、その視線に全く気付くことなく席替えの話は進んでいった。

(十代目に近い席であれば、良いだけの話だ)

そう思考を無理矢理巡らせる他、今の気持ちを静める事は出来そうになかった。



くじも引き終わり、新しい席順が発表された。

前から2番目…――
以前よりも色々と窮屈そうな席だが、十代目の近くである事に安堵した。

席を移動して、俺は一息尽いた、が…―――


「獄寺隣じゃん!」
「なっ!!(……まじかよ)」


安心したのもつかの間、隣から掛けられた声に驚いた。

「なんでテメーが隣にいるんだよ!」
「ええー。先生、前で発表してたじゃん…」
「うっせー!オトコ女ッ」
「オトコ女って俺のこと?ひっでーヤツ」
「テメーなんざ、オトコ女で十分だ。ケッ」
 
(誰がこんな奴と仲良くするかっ!!)

俺が顔を反らすと隣の方から苦笑が漏れたのがわかり、さらに自分の心が苛立ったのが分かった。

「…―――あ。」
「ああ?」

ポツリと思わず溢れたような声につい反応してしまった。そいつの視線の先を辿る。

「(…って、野球馬鹿と無愛想女かよ)」

席が前後になったらしく、2人で何やら話す姿がそこにあった。それが少し奇妙な光景思えた。

「(まぁ、あの野郎と一緒にいるのは、ほとんどこいつだったしな)」

ただ何となくもう一度隣の人物を目を向けると、そいつの顔が寂しげに曇った。
しかし、俺の視線に気付いたのか顔をこっちに向けたときには、何時ものヘラヘラした顔に戻っていた。
自分には先程の表情の理由について特に興味はない。ただ少し胸の辺りがモヤっとしてしまい、その事に苛ついた。

自分には関係ない事だと、俺は無理矢理考えるのをやめたのだった。


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