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「華を織る」
02

「‥‥」
 一瞬見惚れてしまった彼だったが、自身の不躾な視線に気付き慌てて顔を正面へと戻す。
 屋敷を守る警備員とは言え、全ての道行く人々を検分する訳にはいかない。この往来は全ての人に開かれているのだ。
 とは言え、本当に綺麗な立ち姿だった。通り過ぎる横顔を少し眺めるぐらいなら‥‥内心そう言い聞かせながら、彼は再び女性の方へと視線を向ける。
 外套の中にはどれ程の美貌が隠れているのか――と思った矢先、彼の視線の先で女性の姿勢がぐらりと揺れた。


 あ、と彼は心の中で声を上げた。いや多分、実際に声に出していただろう。
 不安定に揺れた女性の身体は、そのまま崩れる様に傾ぐと屋敷の外壁へ凭れ掛かる格好となる。
「!どうされました?」
 急いで女性の許へと駆け付けた彼は、その細身の身体の何処へ手を伸べれば良いのかと悩みながらも、何とか女性の身体を抱え起こした。
 細心の注意を払っていたつもりだったが僅かに振動が伝わってしまったらしい、目深に被っていた外套がはらりと落ち、女性の顔が昼下がりの陽光の下に露わになった。
「大丈夫で‥‥」


 ああ、これは。
 何て綺麗な。


 助け起こした女性は、彼が予想していた以上の美しさと品の良さを兼ね備えていた。
 絶世の美女と言う訳では無い、しかし彼の目を奪うには十分な容貌である。ぎりぎり手の届く処に居る美人、とでも言おうか。
 ‥‥いや、今はそんな事を考えている場合では無い。
「お加減は如何ですか?お嬢さん」
 虹将軍の屋敷の前で妙齢の女性が倒れたとなっては、世間体も悪い。良く見ればその嫋やかな顔には、苦悶の表情が刻まれているではないか。何はさておき介抱しなければ。



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あきゅろす。
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