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「華を織る」
09


「‥‥しかし、随分と暖かくなったな」
 半分ほど開けられた掃出窓を見遣り、桜木は目を細める。
 東の剣の詰所でも、つい先日まではきっちりと締められていた窓が、ここ数日は景気良く開け放たれていた。
 『暖かい』が『暑い』に変わる日は、直ぐそこまで来ているらしい。
「ええ、もう暫くすれば『短夜祭』ですからね」
 そよぐ風を頬に受けながら、亜紀も同意する様に頷く。


 ‥‥年に一度、太陽が一番高く昇る日『短夜』。
 神が地上を審査すると信じられているその日は、十日間の休戦期間の最終日でもあり、各地で夜を徹して祭が開かれるのが常であった。


「短夜祭、か」
 懐かしそうに桜木が呟く。「――そう言えば、随分と行っていないな」
「桜木様、祭は嫌いですか?」
「いや、むしろ大好きだよ。一晩中、屋台を覗き回りたいぐらいだ」
「、じゃあ、」
「ただ、毎年何だかんだと仕事が入ってしまってね」
「‥‥そう、ですか」
「‥‥」


 一拍置いてからゆっくりと頷いた亜紀の様子が、少し萎んでしまったような気がするのは。
 そしてそれが『毎年仕事』と告げた桜木の言葉に反応した為だと思うのは。
 都合の良い解釈だろうか‥‥?


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