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「華を織る」
07


 もう片方の手も添え、両手で包み込むようにそっと黒水晶を握る亜紀。
 指先から全ての情報を探ろうとする様な亜紀の仕草を、桜木も息を詰めるようにしながらじっと見守る。
「これ‥‥石、ですか?」
「水晶だよ」
「じゃあ、透明なんですね」
「ああいや、黒水晶なんだ」
「黒水晶?じゃあ、黒いんですか?」
「ああ」


 頷いた桜木は考え込むように己の指先を見詰めたが、しかし一瞬の躊躇の後、意を決したように手を伸ばした。
 そのまま亜紀の黒髪を――その肌には触れないように慎重に――そっと引っ張る。
「さ、桜木様??」
「ちょうどこんな色だよ、亜紀」
「、え?」
「黒くて艶やかで。そう、亜紀の瞳や髪と同じ色だ」
「‥‥」


 言いながら、内心桜木は首を傾げる‥‥おや、今回は弾かれる気配が無い。
 もしかして髪は除外なのか?直接肌に触れなければ大丈夫なのか?それとも流石に諦めたのか?
 ‥‥まあどちらでも構わない。どちらにしろ、俺がこの子に触れられ無い事に変わりは無いのだから。
「ちょっと謂れのある水晶でね。譲ってくれた旅商人曰く、お守りになるそうだ。――亜紀?」
 そこまで一息に告げた後、ようやく桜木は亜紀の様子がおかしい事に気が付いた。
 驚いた表情を浮かべたまま固まった様に動かない亜紀へそっと声を掛けると、漸く我に返ったように身動ぎする。




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