9:1な彼
5
「…ったく、そんなに泣くなよ。何?泣くほどに嬉しかったの?」
「うん…。」
顔中涙やら、鼻水でぐちゃぐちゃだ。あれから数分が経ったけれど、俺の涙はなかなか止まらない。
俺は素直に頷きながら、ずびずびと鼻を啜っていると、不意に白いものが視界に入った。
「…?…ずびッ」
「…ほら、拭けよ。」
差し出されたのはティッシュだった。その優しさにまた涙が出そうになったけれど、我慢した。これじゃ、きりが無い。
貰ったティッシュで顔をキレイに拭いていたら、
「…ホント汚ねぇ…」
と言って、祐希さんは笑いながら、一緒に涙を拭いてくれた。それにつられて笑っていたら、今までの優しい祐希さんはどこへやら、あっという間に毒舌祐希さんが帰ってきた。
「てかさ、頑張って成績が上がるかどうかもわからないこの状況で、よくそんなこと考えたな。
やっぱり、お前バカなんだよ。生粋のバカ。バカだけじゃ足りないな。阿呆だな、阿呆。」
「えぇ!?だって、さっきはやれば出来るって…。」
「あぁ。あんなのは俺の勘違いだったみたいだ。
だよな、じゃなきゃ、やる前から出来るとかアホなこと考えて、本気出さないやつ相手にそんなこと言えねえもんな。」
うんうんと頷く祐希さん。
そ、そんな…!!
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