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むかつくアイツは、気になるソイツ
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「神崎!!神崎!!」
「なんですか?聖二さん。」

 俺は自分のデスクから、外回りから帰ってきたばかりの神崎を見つけて呼び止めた。

「聖二じゃない!!苗字で呼べ!!苗字で!!いつも言ってるだろ!?…〜って、そうじゃなくて!!」

 このままじゃ話が違う方向へ行ってしまいそうで、俺は苛立ちながら机を叩いた。
 お前、ちょっとこっち来い、と言い俺は神崎を連れてオフィスにある空き部屋へと向かった。

「お前、なんで勝手に俺のクライアントに手を出した!?」

 部屋に入って、ドアを閉めてから振り向き様、神崎に対して言った。
 そうだ。この目の前にいる神崎直が俺の大事なクライアントを横取りしたのだ。だから、俺はとても腹を立てているんだ。

「取る…? ああ…。あのクライアントですか?」

 はじめ、神崎は意味が分からないという顔をしていたが、なんのことだか思い当たったらしい。

「別に取ったわけじゃありませんよ。あの時クライアントは急いでいましたし、村上さんは外回りに出ていたんで、すぐに連絡がつかない状態だったんですよ。だから、内容を見て、自分でも出来ると判断したので、俺が片付けたんです。」

 だから、俺は取ろうとはしていないと弁解をする。

「だけど…!!」

 確かに、あの時はすぐに連絡を取れる状況ではなかったし、後で留守電にもちゃんとそのことが入っていた。
 だけど、悔しいのだ。俺よりも年下のくせに、身長も高いし、ルックスもいい。なにもかも負けているのだ。わかっている。これはただの八つ当たりだ。
 でも、どうしても悔しくて、俺は下唇を噛んで下を向いてしまった。手のひらは爪が食い込むほど握り締めていた。

「聖二さん…。やめてください。」

 神崎はそう言って俺の固く握りしめた手の上からそっと手を重ねてきた。

「やめてください。傷がついてしまいます。手も……唇も。」
「え…?ちょっ…んン!?」

 顔をあげて気づいたときには、神崎の顔が目の前にあって、びっくりする余裕もないまま唇が神崎のそれに塞がれた。

「ん〜!!!んン〜!!!」
 
 何故こんなことをされるのか、全く分からず、俺はとにかく暴れまわった。動かせる腕を使って必死に神崎の胸を叩いた。

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