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〜記念品〜
物知りなキミ 〜the perfect sweet!〜






※物知りなキミ設定です
 拍手であったシュナイゼルの転寝をスザクが目撃する、という内容です★
 それではどうぞ!
































この広大とも言える邸宅に花嫁修業で訪れてから、既に半月が経過した。


仕事の手順も要領もだいぶ良くなり、今では美術館の事務処理も空いた時間に出来るようになっているほどだった。




尤も、何十部屋もあるブリタニア邸を1人で切り盛りする事なんて不可能に近い。



いや、学芸員であるスザクならやりかねないが、それでは共に過ごす時間が減ってしまうとシュナイゼルが良しとしなかった。



話し合いに話し合いを重ねた結果、シュナイゼルとスザクに宛がわれた部屋の掃除、毎日3食の用意とその片付けだけに落ち着いた。




美術館の新しい地下倉庫明細を終えてパソコンの電源を落としたスザクは、柱時計に目を向けてから立ち上がる。




無駄に広い部屋を横切りながらシャツの袖を捲り、軽い足取りで厨房へと向かった。







日雇いの使用人とも仲良くなったせいか、沢山のメニューや料理のコツなどを教えてもらったスザクは、ティータイムに出す予定のケーキを味見してもらう為に、とある部屋に足を運んでいた。



シュナイゼルの自室だ。


どんなに思考が大人びていても、財閥の仕事を兼任していても、人あしらいが巧くても、何だかんだで彼もまだ高校生。


現在彼は、再来週末までの課題に取り掛かっている最中だった。



というのも、今日は彼らの通う学校が創立記念日で休みなのだ。

同じ一貫校に在籍するルルーシュやクロヴィス、ナナリーもそう。





スザクは簡易セットを手に、ゆっくりとノックしてからノブを回した。



「シュナイゼルさん、入りますよ?」



返事は無いが、取り敢えずドアを開いてみる。



おおよそ高校生が使うに相応しくないカウチの上に、部屋の主はいた。



規則正しい寝息を立てて。




「……お昼寝……中かな…?」


どうりでいつもの返事がない訳かと納得する。



足音に細心の注意を払いながら、スザクは銀のトレーを近くの丸テーブルに置いて歩み寄った。


寝る寸前まで読んでいたのであろう分厚い専門書、それも恐らくはドイツ語で記された物が、腹部の上に広げたまま伏せられている。


表紙くらいなら何とか読めるが、中を覗く気にもなれない。




開け放たれた出窓から差し込む午後の日差しが、シュナイゼルの見事な金髪を照らしていた。



『睫毛、長いな…。』



今思えば、寝顔を見られる事はあっても見ることは無かった気がする。



新鮮な感覚に微笑み、前髪を少しだけ梳いて頭を撫でる。

普段は彼の方が背も高く大人びている為か、こんな事はしないし、恐らくさせてもくれない筈だ。




髪から形の良い頭、項から頬へと手を滑らせて触れる。


陶器のような白い肌に指を這わせて、美しい寝顔を覗き込んだ。



「…かっこいいなぁ……もう…。」



悔しいなんて感情も湧かなくなってしまった。



優しくて器用な人、もちろん誰に対しても同じという訳ではないだろう。


言葉遣い、仕草、笑い方、全てがいつも誰にでも柔らかい訳じゃない。



しかしそれでも、スザクはシュナイゼルを愛おしいと思うのだ。


同性で、自分よりも年下で庇護されるべき存在なのに、いちいち秀麗な彼が。



「もっと子どもでいないと、駄目ですよー…?」



耳元で囁き、それでも静かな寝息に笑う。



風に揺られて純白のカーテンが舞い、机上に置かれた本のページが音を立てて捲られる。


穏やかな気候と温かさに後押しされて、スザクはそっと唇を寄せてシュナイゼルに口づけをした。



ただ重ねるだけの拙いキスに満足して離れかけた瞬間、頭の後ろを押さえられて目を見開く。

背中にも手を回され、驚いている隙に口をこじ開けられる。


侵入してくる舌に反抗したくて、スザクは自ら己の舌を絡めた。



僅かに動きを止めたシュナイゼルに気を良くして、彼の上顎や美しい歯列を辿ってみる。



此方の意図が読めたのか、彼はただされるが儘になっていた。

スザクがする事を楽しんでいるようで、こうなったら意地でも気持ち良くさせてやると心に決め、何もしない彼の舌を吸ってみる。



生々しい水音を立てながら、最後に彼の唇を甘く噛んで離れる頃には、スザクはへとへとになって目の前に横たわるシュナイゼルの体に全身を預けていた。



「珍しい、スザクが寝込みを襲うなんて。」

「…あのですね……。」



白々しく肩を竦めて笑うシュナイゼルに、もう何も言えなかった。

まるで、先程スザクが眠っている彼にしたように頭や頬を撫でるので、溜息を吐いてしまう。



「…いつ起こしてしまったんですか?」



言外に眠りを妨げてしまった事を仄めかすが、相変わらずシュナイゼルは楽しそうだ。


「君が私にキスをしてくれた辺りかな?」



乾いた笑いしか出て来ない。


恥ずかしくて顔を伏せていると、顎を取られて上を向かされる。



「甘い香りがするが、ひょっとしてあれを持って来てくれたのかい?」


長く整った指を緩く持ち上げ、テーブルを示す。

そこで漸くスザクは本来の目的を思い出した。



「今日のおやつにどうかと思って…。
 ガトーショコラなんですが、甘さ加減がいまいち分からなくって困ってるんです。」



言って取って来ようと上体を起こしたのに、肩を掴んで椅子の上に押し倒される。


上に被さって来たシュナイゼルを見上げると、優しく甘い微笑みが見下ろしてくるのだ。



スザクの首に締められたループタイを手慰みにしながら、その実ちゃっかり結び目を解いている辺りが憎らしい。

にっこりと笑って、シュナイゼルが首を傾けた。



「スザク、さっきのキスの責任、取ってくれるんだろうね?」



しゅるりと抜き取られた紐の間隔に声が漏れる。

そんな他愛ない仕草に、シュナイゼルが嬉しそうに笑って見せた。




「あ、でも…お茶の時間が。」

「そんなものメイドにさせれば良い。
 どうせルルーシュもクロヴィスも自分の事で手一杯さ。」



スザクの頬を指でなぞり、薄く開いた口に親指を掛けて濃厚なキスを仕掛ける。

自分がした口付けとは比べ物にならない熱情に、スザクは自らの体の火照りを悟る事になった。





「極上のデザートだね。」





指先まで真っ赤に染まったスザクの耳に舌を伝わせて囁くシュナイゼルの表情は、氷砂糖のように冷たくて甘い優しさを秘めていた。




































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