拍手小説 8 龍治Side 「こ、来ないで下さい!」 俺が近づいていくと、突然根暗の叫び声が聞こえた。 「あ゛ぁ!?」 せっかくこの俺が来てやったのに、何だその言い草は! と、俺の方が根暗を殴りたくなったが、よく周りを見てみると、その場には5人の長身の内2人が倒れていた。 (まさか、根暗がヤッたのか!?) 俺は、驚きつつも状況把握につとめた。 「ちょこまか逃げてンぢゃねぇーよ!」 「大人しく犯されろや!!」 「まずは一発殴らせろ!」 「い、嫌です!」 根暗が3人の不良から逃げ回っている。 その様子から根暗のさっきの言葉は俺に向けられたものではないことが分かった。 根暗が壁に追い詰められたのが見えた。 信じられないことに、コイツら全員俺の存在に気付いていない。 ザコだな。 俺は、物陰から根暗達の様子をうかがう。 根暗は今左右と前を男達に、後ろを壁に挟まれている。正に絶対絶命だな。 とりあえず、一発くらい殴られるのを見てから出ていこうと決めてそのまま様子をうかがう。 「手間掛けさせるンぢゃネェーよ」 ニヤニヤ。 下品な笑いを浮かべて、根暗ににじり寄っていく三人。 「や、やめ!」 根暗は表情は前髪で見えないものの、怯えているのか、声同様体も震えている。 ズキン! (は!?何だこの胸の痛みは!?) 訳の分からない胸の痛みに俺は驚いた。 「ヒッ!」 再び根暗の引き攣ったような声が響く。 ズキン!! まただ! あんな普通顔で根暗なヤツがボコられようが、犯されようが俺には関係ねぇーはずなのに… 俺が混乱している間にも事態は進む。 「大人しくしな!」 そう言って右側の不良が根暗に向かい拳を振り上げる。 俺にとってはカスみたいな奴でも、根暗にとっては相当ヤバい相手だろう。 男の拳が根暗の顔面に向かって行く。 そう認識すると同時に俺の体はとっさに動いていた。 「裕次郎!!!」 (間に合え!!) バキッ! 辺りに殴られた音が響いた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |