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18
目の前の人が幹部だからというわけではない。
いや、厳密に言えば、幹部半面狂の登場による恐怖で我に還ったということが正しい。
新たな人物の登場によって僕は我に還ったのだった。
そして、自分の行動を振り返り愕然とした。
「ご、ごごご!ごめんなさい!!」
我に還ってからの僕の行動は早かった。
恐怖で強張る体を無理矢理動かして、九十度に頭を下げる。
(な、なんてことを、あの【キル】の総長様の手を…!)
有名なのだ。
…キルの総長様は相手から自分に触れられるのが大嫌いだということは。
ケガに気を取られ過ぎてそのことをすっかり失念していた。
これは理不尽な怒りではない…
僕の失態だ。
確実にキレているであろう総長様と幹部さんそして、不良さん達に囲まれてしまった僕に生き残る道は…ない。
僕はひたすら頭を下げるしかなかった。
恐怖と自分に対する怒り、そして、相手を傷つけてしまったことへの申し訳なさが混じり合い、頭が上げられない。
さっき不良さんAから助けてくれたのは、関矢さんのただの気まぐれだったかもしれない。
それでも僕が恩を仇で返してしまったことに代わりはない。
関矢さんは僕の方に一歩踏み出し、ただでさえ近い間合いをこれでもかと言うほど近づけて来た。
僕はやっと覚悟を決めた。
しかし、拳を見つめていられるほどの勇気はない。
僕は握り拳を作り両手に力を入れ、目をギュッとつむった。
グイッ!
予想していたバキッ!っと言う音は訪れず、殴られると言う僕の予想はまたしても裏切られた。
突然僕は腕を引かれたのだ。
関矢さんの予想外の行動にとっさに反応できず、僕はされるがまま腕の中に倒れ込んだ。
(へッ!?な、なんですかぁぁ!?)
突然の出来事に僕は目を白黒させる。
関矢さんに引き寄せられたというだけでも相当驚いたのに、追い討ちをかけるように関矢さんから発せられた言葉に僕はさらに驚かされた。
「コイツは今日から俺のモンだ!手ぇー出した奴はブッ殺す!」
屋上中に響いた大声に一瞬時が止まったが、ヒューっと言う口笛を皮切りに、屋上全体が不良さん達の大絶叫に包まれた。
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