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後ろを振り返ると、そこにはスキンヘッドに大量ピアスの不良さん。

こめかみの辺りに血管が!

「ヒッ!」

僕は恐怖のために引き攣ったような声を出す。
顔も引き攣っているに違いない。
例え前髪で見えなくても。
不良さんに睨まれて、
全身がガタガタ震えてくる。

僕最近こんなのばっかりですね…

頭の隅でそんなことを考えていると、ニヤリッと笑う不良さん。

まるで自分より弱い獲物に食いつく動物のようだ。


悪くない顔だちなのに、その表情に、お、僕は表しがたい嫌悪感を感じた。


次の瞬間、スキンヘッドさんは拳を振り上げてきた。

狙いは間違いなく僕の顔面。そう分かっていても、ガードの為の腕が恐怖で上がらない。


僕は反射的に目を閉じ、衝撃に備えて歯を食いしばった。




………。

いつになっても衝撃が来ない為、僕は恐る恐る目を開けた。

前にいるのはスキンヘッドの不良さんだったはずなのに、僕の目の前には関矢さんの背中があった。


え?

予想外の出来事に、僕は何度も目を瞬かせる。


関矢さんが、助けてくれた?


現在僕の頭の上には大量のクエスチョンマークが。



僕をリンチするために屋上に連れて来たはずの関矢さんに庇われたという奇妙な事態に僕は混乱した。

バキッ!
次の瞬間何を拳で殴ったような鈍い音が聞こえる。

ガシャン!
その後フェンスにぶつかった音が響く。


その大きな音に思わず身をすくませた。

一瞬の静寂の後、ざわざわと騒ぎ出す不良さん達の声が聞こえた。

何が起きたのかは関矢先輩でよく見えなかったが、今の音からだいたいの予想はつく。

頭の隅でぼんやり考えていると関矢さんは僕の方を振り向いた。

「…大丈夫だったか?」

本当にこの人は冷酷非道と言われている【キル】の総長なのだろうか…

聞こえてきた声のあまりに優しい響きに、僕は困惑した。

「はい」

いつもの恐怖感を忘れたために、吃らず、反射的に返事をする。

「ッ!!」

僕の返事を聞くやいなや、また向こうを向いてしまう関矢さん。

たださっきと違うのは、関矢さんが顔だけを背けて、左手で口元を押さえて、なぜか顔を赤くしているということだ。

その様子を見て僕はハッと気付いた。

「あの、関矢さん…」

僕はそう言って恐る恐る手を伸ばす。

不良さん達が息を呑む音が聞こえる。

「あいつ、殺される…」

誰にともなく呟やかれた声。

僕はそれでも手を伸ばす。そして、関矢さんが口に当てていた手をそっと掴んだ。

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