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「悪かったな。シャツはよく借りに来る奴らがいるから用意してあるんだが、ズボンは余り借りに来ないからな」
静先生がロッカーから出したズボンを手に歩いてくる。
(それにしても、何故シャツがそんなに貸出されるのでしょうか?)
僕はふと疑問に思った。
脱衣所に完備されていたところから推測すると、多分シャワーを使うくらい汚れるんだろうけど…
学校で凄く汚れるなんてこと余りないだろう。
しかも、先生の様子からしてかなり頻繁のようだし。
考えれば考えるほど深まる疑問。
「理由はな、」
僕が余りに考え込んでいたために、疑問が顔に出ていたのか、静先生が僕の疑問に答えようとして口を開いた。
が、話しは続かなかった。
関谷さんの方を静先生が見つめたからだ。
僕の方からは関谷さんの表情は見えない。
(裕次郎に言っていいか?
シャツが完備されているのは絶倫な愚弟のセフレが使うからだって)
(いったら殺すぞ!)
(ほー、まだそんな口を利くか)
(あぁ゛!?)
(あー、思わず口が滑りそうだなー)
(い、いわ、ないで、クダサイ)ゼッテェー殺す!
(まぁ、ぎりぎり合格だな。お兄様に感謝しろよ)
「高校生なんてまだ餓鬼でやんちゃな時期だからな」
「そう、なんですか」
「ンなことより…さっさと下はけや!!」
「はぃぃぃいい!!」
やっぱり関谷さんは恐いです!!
顔だけなら静先生の方が恐いくらいなのに。
多分内面の問題なんでしょう…
関谷さんって中身まんまヤンキーですし…
族長だから喧嘩も強いんでしょうし…
僕は借りたズボンをはきながらそんなことを思う。
も、もしかして、僕いつかボコボコにされてしまうんでしょうか!
に、逃げたい!
絶対に罰ゲームの相手にされているであろう自分のこれからの待遇を思い、血の気が引いていく。
が、関谷さんは俺の格好を見た後、急に僕を抱き上げた。
「ひぃ!?」
僕の口から悲鳴が漏れる。
関谷さんは僕をちらっと見てチッ!と舌打ちをすると、僕を持ったまま保健室を後にしようとした。
この後殴られるのでしょうか…
さようなら。
僕の短い人生。
僕は最後にと思い、お世話になった静先生に微笑んだ。
「ありがとうございました」
ピシャン!!
そして、無情にも、ドアは閉まったのだった。
僕は知らなかった。
僕が笑った時に長い前髪に覆われていたはずの顔が見えていたことや、静先生が平凡顔が好きなことなんて。
そして、「ヤバイ…マジ惚れた…」なんて先生が顔を赤くして呟いたなんて、まさか夢にも思わなかった。
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