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13

「ふー、さっぱりしました」

シャワーを浴びて泥を流した僕は、シャワールームにあった備え付けのシャンプーで頭を洗い終えて脱衣所にでてきた。

「えーと、着る物、着る物」

キョロキョロと脱衣所の中を見渡す。

「あ、あれかな?」


長い前髪の間から、脱衣所の入口にある洗濯機の上にワイシャツが置いてあるのが見えた。

近づいてそれを手に取る。広げてみると、確かに学校指定のエンブレムが刺繍してある。

ふと、シャツがあったところに目をやると、何やら殴り書きしてある。

〈備え付け着替えだ。勝手に使え。〉

(静先生の字でしょうか?)

「とりあえず、借りていいようですね」


着替え終わり、脱衣所の外に出ようとしたが、外(保健室)では未だに怒鳴り声が響いている。

内容までは聞こえないが、…こ、怖い。


よし!

このままではらちがあかないと思った僕は、ドアノブを掴んで、気合いを入れて、一気に脱衣所の扉を開け放った。


「都合のいい時だけ兄貴ヅラしてんじゃねーよ!」

急にクリアになった関谷先輩の怒鳴り声に一瞬ビクッと震えた。

しかし、今、何か気になる単語がなかっただろうか?
…兄貴ヅラ?
…兄貴?
関谷さんのお兄さん!?

思わず、僕の口から驚きの声が漏れた。

「…御兄弟?」


バッ!

僕の呟きが聞こえたのか、勢いよく僕の方を振り向いた関谷さん。

「ちげぇ!…ぁ?」

振り向いた関矢さんは僕を視界に入れるやいなや固まってしまった。

「あ」

次いで僕をみた静先生がしまった!というように口に手をあてている。

僕はとりあえず、二人の方に向かって
「ズボン貸してください」

と言った。


その声で我に帰った様子の関矢さん。僕の方に眉間にしわをよせて、つかつかと歩いてくる。
(こ、恐いです!!)

正に鬼の形相。
その顔のままで僕の目の前に腕を組んでたつ。

「テメェー…さっさとズボンをはけ!この馬鹿!(もしかして、俺を悩殺しようとわざとか!?カワイイとこあンじゃねーか。でも、だからって俺以外のヤツに…糞兄貴にそんな格好見せてんじゃねーよ!)」

「(こんな気持ちの悪い格好して)す、すみません!」

確かに僕がしている格好は可愛い女の子にして欲しい格好ナンバー1(僕の中で)の少し大きめのYシャツにズボンなしで、見えるか見えないか曖昧なラインが最高!

って、お、ぼ、僕としたことが。

まぁ、とにかく男の僕がしても害にしかならないわけで…関谷さんの怒りもごもっともです。

男がやってるのを見たら、僕なら間違いなく吐く自信がありますし。

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