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不思議な来訪者
4
「はぁ〜い!兄ちゃん。アンタの相手は俺達だよ」

「そうそう、俺達のダチ半殺しにしてくれちゃったお礼をしないとねぇ」



何言ってんだこいつらは。

当然のことながら、俺にはまったく身に覚えがない。


「ほらみろ!!」

先に殴り合いを始めていた武が一人を殴り飛ばし、その合間にこちらを振り返って言った。

それみたことか。と言わんばかりの態度に俺の繊細な心はズタズタだ。


馬鹿の武は後で泣かすとして…




「人違いだ」

キッパリ。
ここはしっかり訂正しておきたい。


「テメー!バックレよーったってそーはいかねーぞ!」

俺にしたら当たり前の見解なのに不良どもは唾を飛ばす勢いで怒鳴り散らした。

…汚ねーな。

「テメーのその、何人か殺してます!みてーな凶悪な面を忘れるわけねーだろうが!!」

またまた心底心外だ。

俺の目つきが多少悪いのは確かだが、殺人はしたことない。事実無根だ。濡れ衣だ。


「覚悟しろや!!」

怒りに顔を歪めた三人が拳を固めて一斉に突っ込んできた。


一対三とはな…

そんなんで俺をボコれるとでも思っているのか…?


俺もダテにこの目つきの悪さのせいで10年間も不良に絡まれてねーんだよ。





「ガラ空きだぜ!!」

顔面を狙って拳を振り上げた金髪不良を避け、振り向きざまに回し蹴りを放つ。
間髪あけずにもう一人の不良の鳩尾に拳を叩き込む。

最後の一人の顔面に拳を叩き込もうとしたところで

「ヤロッ!!」

かわされた。

…一人くらいましな奴がいたか。


俺の一撃目を避けた奴が一人。よく見たら最初に絡んできた金髪不良だった。



でも、たいしたことないな。

悠長に構えてしまうのは相手の実力上仕方がないと思う。

少し遊んでやるか。


一発よけて調子に乗ったのかニヤリと笑った金髪不良が反撃開始とばかりに殴りかかってきた。


「くたばれっ!!」


遅…これなら蚊がとまれそうだ。

これでコイツがどこぞの総長とかだったら笑えるな。



にしても、そろそろ飽きてきたな。
いい加減沈めるか。

そう思った瞬間、何故か俺の前に壁が…。
てか、人間?

人壁のせいで金髪不良が視界から消えた。見えはしないがその代わり「グハッ!!」…何故か悲鳴が。


代わりに視界に飛び込んできたのは、顔見知りだった。

………多分な。


190センチ以上の長身に有り得ない程脱色された銀色の髪、極めつけは両耳の大量のピアス。
そして見るからに不良。

正面からこの男を見るのは初めてだ…。


振り向いた男の顔は…


…見えねー。


男の顔は大量の前髪で全く、これっぽっちも見えなかった。

二日連続で俺の家で倒れていた理由も分からんが、ソレ以上にこの男が分からん。

目すら見えねーってどうなの。



この男は一体何のために突然現れたんだ。

人の顔をじっと見たまま一言もない。


というか、まったく動かない。まさに微動だにしないという言葉がピッタリ当てはまる状態だ。


喧嘩売ってんのか?

「………」


俺の考えが正しければ、コイツも俺が気に入らないんだろう。あんな手の込んだ嫌がらせ(家の前に倒れる&不法侵入)をするくらいだからな。


「あんた誰?」

だからと言って剣呑な声を出すわけでもなくいつもの如く抑揚のない声で俺は男に問いかけた。



嫌われることなんて慣れている。今更何人増えようが大した違いはない。

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あきゅろす。
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