不思議な来訪者
3
「で?どういうワケだ?」
「ちょッ、く、苦しい!締まって…!!」
力を込めすぎたか。
このままじゃ埒があかねー…
とりあえず胸倉を離した。
「ゴホゴホッ!テメー!殺す気か!?」
「安心しろ。馬鹿はそうそう死なん」
残念なことにな。
「誰がバカだ!誰が!!」
「…うぜー」
ボソリ。
「聞こえてんだよ!!だいたいテメーは、いつもいつも〜!!このッ…ぶッ!!」
「黙れ、囲まれた…」
ギャンギャンと犬のように吠えまくる馬鹿の口を塞いだ。
「んッ!?プハッ!…マジか…?」
馬鹿でも空気くらいは読めるらしい。声を潜めて気配を探り始めた。
「1、2、3、4………………ザッと数えて10人といったところか。オイ、馬鹿、お前のせいか?」
舌打ちしたい気持ちをぐっと抑えて聞いた。
「あ?どーせ、蛮が恨み買いまくってるからだろ?」
だが、返ってきた言葉には心外だと言わざるをえない。
当然のように言ってきた馬鹿には後で教育的指導をするとして…
誰が恨みをかってるって?
どこぞの族で駄犬呼ばわりされている奴ならともかく、何故こんなに優しい俺が恨まれなければならないのか。
大切なのでもう一度言うが、心外だ。
「善良な一般人に何を言う。お前のような不良と一緒にするな」
「善良?一般人?笑わせんなよ。テメーも不良だろーが」
当たり前のこと言わせんなよ。とボヤいた武。
言っておくが、俺は不良になった覚えなんぞない。
「おにーさん達、ちょっと俺らに金恵んでくれない?」
何だ、今時カツアゲか。
ゲラゲラ笑いながら鉄パイプを持ったカラフルヘヤーの団体が木の陰からゾロゾロ出てきた。
「そーそー、俺ら今メチャメチャ困ってんだよね〜」
頭の悪そうな奴らだな。
「集金にごきょーりょくクダサ〜イ!なんつってぇ〜!!」
正直、武以上の馬鹿に見える…可哀想に。
きっと脳みその替わりに紙屑が詰まっているに違いない。
もしくは、スッカラカンか。どっちにしても、哀れだな…
「テメー!ふざけてんのか!?あ゛あ゛!?」
さっきまでヘラヘラと馬鹿みたいに笑っていた集団が急に憤怒の表情を浮かべ、一人が怒鳴り散らした。
「何なんだ突然?」
急に喚きやがって、うるせー蝿どもだな。
「さっきから思ってること口からだだ漏れだからだよ!」
武に言われて初めて声に出していたことに気付く。
そーだったか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
そろそろスーパーの特売の時間だし。武を叔母ちゃんの所に送還するのは明日にして、行くか。
「じゃ、武クン。後頼むわ」
臨戦態勢の武の肩をポンと叩くと俺はポケットに手を突っ込んで歩き出した。
「ちょ、オイ!!蛮ー!待ちやがれ!テメーが煽ったんだろーが、自分でどーにかしやがれ!!」
ガシッと俺の肩は掴まれた。
「今から特売なんだよ。だから後頼むな」
一人暮らしの俺の家計は火の車状態なので特売は欠かせない。
この人数でこのレベルなら武でも大丈夫だろう。
そう思い歩き出したのだが…「ちょ待てや、兄ーチャン」不良の内三人程が俺の前に立ちふさがった。
はぁ、まったく。
迷惑極まりない。
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