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不思議な来訪者
8


暗くてもよく見える範囲にいる武、壮士、目の前の男の顔は特に面白かったが。



「別に知ってたわけじゃねーよ」
俺は改めて目の前の男と向き合った。



「なら何故俺の名前を?」


「知ってる奴に似てたから。まさか同じ名前だとは思わなかったけどな」


男はへえ。っと何気なく返して再び手を差し出して来た。



「改めまして、裏影夢の副総長の英李波瑠都(えいりはると)だ。君のことは武から色々と聞いているよ。武の従兄弟なんだって?」



一瞬迷ってから俺も手を差し出して挨拶を交わす。

もちろん、野郎の手をいつまでも握りしめる趣味もないのですぐに離したが、一瞬放たれた殺気にため息を付きたくなった。出処が一目瞭然なため確認する気も失せる。



「…ああ、胸糞わりー上に全く認めたくないが事実だな」

「オイ!!」


武の抗議の声に関しては総スルーするとして、さっきより中の奴らのざわめきが凄くなった。


「え!?た、武さんの!?イトコ!?」

「ま、まままままさか!!」

「マジかよぉ…おれアイツに喧嘩ふっかけたことあんだ
けど…」

「まじか、お前武さんにヤキ入れられっぞ!!」

「似てねー…あれじゃ血縁関係なんてわかりっこねーだろ」

「つーか、そんな奴がなんで今日ここに来るんだよ」

「おいまさか、新しく入ってくる気か!?」

「それしか考えられねーだろ…今日のこの時間にここに来るってことはよぉー」

「はあ?まじか!?」

「つーかあいつ強ぇーのかよ?」

「そーだよな!いくら武さんの身内っていっても弱ぇー奴はいらねーよな!」

「バッか!!てめー武さんに殺られっぞ!!」



耳に入ったのはこれくらいだが、半数以上が馬鹿みてーなことを口々に騒いでいる。
気になる内容が幾つか含まれてたのは気のせいじゃねーよな。


確認しておくべきだな。早急かつ速やかに。

「んで、通名は“漆黒の悪魔”」

そう結論づけた俺が後ろの二人に詰め寄る前に爽やかにそう続けた男に俺は眉を寄せた。


一瞬の静寂。


「こ、こいつがあの…?」

誰かの呟きで凍りついた空気が一蹴された。その後、一段とざわめきが強くなった室内に俺の眉はいっそう強く顰められた。



さっき以上に好き放題言われてるのは気のせいじゃねーよな…

つーかなんだよ“漆黒の悪魔”ってのは、中二病かってぇーの。呼んでて恥ずかしくねーのかよ。


オイ…誰が、血も涙もない悪辣で卑劣な悪魔だコラ。なんだ人の肉食ってるてーのは、俺は人外生物か。闇討ちが専売特許だと!?いつも勝手に襲いかかってくるてめーらみてぇーなやつらに言われたくねーよ。しかも、何だ俺の朱里がぁー!!ってーのは、テメーの女なって知るか。


俺の機嫌は急降下だ。いや、もともと悪かったが、今は地に落ちたと言っても過言ではない。


近年稀に見る最悪な気分だ。
あー、なんかスゲー凶悪な気分になってきたな…。そこまで言うからには期待に答えてそのわけわからねー通名とか噂の通り悪魔らしいことしてみるかな。




この時の俺はとても形容しがたいほどの表情をして凶悪なオーラを垂れ流してたらしい。とは後の武談だ。曰く、『…今にも全員惨殺してしまいそうだった』とのこと。顔を青くさせ、ガタガタと震えながらそう語った武。


その他チームの奴らは『『『『『『『『『『『死ってこんなに近いものだったんだなーって…』』』』』』』』』』』と語ったとか。


後は、数人の変人と物好きがいたらしい。

『いい表情するなって思った』と爽やかな笑顔で語ったのは波瑠都。

『…すごく、キレイだった…』恍惚とした表情でそう語った壮士。


『『『…兄貴…』』』潤んだ目で見てくる野郎どももいたとか。





全く何なんだこいつらは。と後の俺は深くため息をつくことになるのだが。それは少しおいておこう。


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