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不思議な来訪者
7

しぶしぶきたこの場所、コイツらのチームの溜まり場だけのことはあるな。


…なんだこの柄の悪いカラフル集団は…



若気の至りで済むレベルを完全に越えてるぞ。






あまり明るくない店内の照明のせいで微妙だが、よく見りゃ、全員が同じマークの付いたジャケットを着てやがるし。





つーか、「あ?なにガンくれてんだテメーら…」


善良な一般市民の俺に対して全員が臨戦態勢ってどうよ…?




「なんだテメー!!」
「殴りこみかぁー!?」
「上等だ!ぶっ殺してやんよ!!」


ほとんど全員がキャンキャン吠える姿に本当にコイツらはこの辺でも最強と言われるチームのメンバーなのかと疑念を抱かずにはいられない。



「ちょ、壮士さん!!いえ、総長!!っちょっと落ち着いてください!!ストップ!!待ってください!!」

「殺る」


後ろの奴らもうるせーし、
マジで帰っていいか。


せっかく来てやった俺に対してなんなんだその態度は?
元はといえば、こいつらの総長と馬鹿武のせいだってーのにあまりに理不尽だろーが…。



つーか、壮士や武がこの扉開けて俺を後で入れりゃーこんな面倒なことにならなかったんじゃねーか…武の野郎マジで殺す。


苛つきのせいでこめかみの辺りが痙攣しているのがよく分かる。

めんどくせー。
この雑魚ども全員沈めていいか?



「こら、お前ら。せっかくを連れてきてくれたお客さんに失礼なことするんじゃないよ」


苛立つ俺の前に奴らの中から琥珀色に近い金髪が俺に近づいてきた。


この殺伐とした雰囲気にそぐわないほど穏やかな声音だが、暗いのでその顔はよくわからない。


「ようこそ。裏影夢(りえむ)へ。氷里蛮(ひょうり ばん)くん」



男が目の前まで来て右手を差し出してきた。


ようやくはっきり確認ができた笑顔の男の顔に俺は絶句した。



「…ハル……?」

やがて我に帰って呟いた俺の言葉に目の前の男は首を傾げた。


「あれ?俺を知っているのか?」

「「!!」」


目の前の男が一度手を引っ込めてわずかに目を細めた。同時に後ろの武と壮士が息を呑む音が聞こえる。


「ッ、珍しいこともあるもんだな。お前が男の名前知ってるなんて。女と犬の名前しか興味ないくせに」


先に衝撃から抜けだした武が後ろから俺に声をかけてくるが動揺を隠せていない。



平静を装いながらも表情からも言動からも余裕が感じられない。

こんな様子のこいつを見るのは久しぶりだな。

何故か久々にもの凄く愉快な気分だ。
自然と笑えてくる。


武の言葉は事実だが、一つ訂正すると、別に名前に関しては男女の区別があるわけじゃねーんだよな。
俺は覚える気のないやつの名前を記憶から消去しているだけだ。


この容姿のせいで喧嘩ふっかけられた回数と逆ナンされた回数だけはやたらと多い。名乗ってくる奴ら全員の名前なんていちいち覚えてられっかよ。



入れようと思えば入るだろうが、キャパシティーと労力の無駄以外の何ものでもない。


男は雑魚ばかりで女とは一夜限りの付き合いが多い。こんな状況で覚えてても意味ないしな。



ああ、もちろん犬に関しては違うぞ。どんなに恐がられても嫌われても名前はおろか顔も一度覚えたら絶対に忘れねーし。同じような顔した犬でも見分けは絶対につく。

人間の双子を見分けるよりも簡単だといつぞや武に話したら『…お前、そこまでいくと恐ぇーよ。…つーか、キメー!!』などとのたまいやがった。


武のくせにと蹴りを入れまくったのは記憶に新しい。




つまり、俺自身は記憶力自体はかなりいいと自負している。


俺の頭はなかなか都合よく出来ているらしく、入れたり消したり自在にできるからテストにも困らねーしな。


お陰で教師にも何も言われねーし、便利だよな。いや、もちもん教師も俺のことはたまに喧嘩に巻き込まれるだけの善良な一般人だと認識しているだろうから、言われなくて当たり前っちゃー当たり前か。



まあ、ただ、男の名前なんて覚えててもなんの役にも立たないから数人しかわからんのはたしかだけどな。クラスのやつも数人うろ覚えくらいだし。ああ、改めて数えてみると確かに少ない。


そういった意味では武が驚くもの無理ないような気がするがこれだけは主張しておくべきだな。



「俺の記憶力はテメーらのと違って優秀なんだよ」


「「「「「「「「………」」」」」」」」



ぐるっと見渡した時、瞬間、時間が止まったように錯覚するほど周囲の音が消えた。



なんなんだよ…。
俺の脳みその優秀さもわからねーのかこの阿呆共は。
どいつもこいつも馬鹿面晒しやがって。


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