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不思議な来訪者
6

下っ端side

ここはチーム「裏影夢(リエム)」の溜まり場。

がやがやと言葉が飛び交い、酒やタバコの香りでむせ返るようなこのバーでは今日も総長不在の状態が続いている。


裏影夢の構成メンバーは30人余りで、準構成員には喧嘩で取り込んだ族の下っ端がいる。


かくいう俺は一応古株ではあるが構成メンバーの末端というポジションである。


もとは違う族の総長をやっていた俺だったが、愚かにも裏影夢の総長である“宇良壮士(うら そうし)”さんにタイマンを挑み瞬殺された過去を持つ。


一瞬のうちに負かされた俺は、退院後、すぐさま仲間と共に傘下に下った。


裏影夢の初期メンバーは10人程度で他の20人程は大体が別の族の総長、副総長格だった奴ばかりだ。よって、このチームは壮士さんの強さに憧れている者が大半を占めている。


裏影夢は完全実力主義で、喧嘩の強さがナンバーに表れる。年一回行われる「ナンバー入れ替え戦」では、準構成メンバーも構成メンバーになれる可能性があるのでみんな必死だ。死人は出ないものの、毎回病院の世話になる奴は後を絶たない。


ここ数年は構成メンバーと準構成メンバーの入れ替わりはないものの、みんな少しでも強くなってナンバーを上げようとしている。



トップ10は皆化物揃いで今までのナンバー入れ替え戦で順位が変わったことは一度もない。



この制度を提案したのはトップ10の内の一人戦闘狂で有名な裏影夢ナンバー3の称号を持つ特攻隊長“遊布武(ゆめ たけし)”さんだ。武さん曰く『裏影夢に弱ぇー奴はいらねー!!ゴタクはいいから力で示せ!!』


この方針には俺も賛成だ。
俺らの総長の周りに弱い奴がいるなんて認められねーよ。


とはいうものの、…


俺自身、喧嘩にはすこしばかり自信があり、そこそこ名も売れていたが、裏影夢の構成員のナンバー決め対戦の中では2、3人にしか勝てず未だに下っ端だ。



…だが、今年の俺はひと味違う!!
憧れの総長に少しでも近づくため、俺は去年から自分よりも強い相手に挑み続けた。


鬼のように強いアイツに何度もブチのめされたが、挑み続けるうちに記念すべき100回の挑戦(約1ヶ月前)では、かなりの攻撃を避けられるようになった。

(結局1発も当てられなかったが…)

と、とにかく準備は万全だ!


俺だけでなく、今日は他のメンバーも皆やる気に満ち溢れている。


準構成員もいる分、普段よりバーの中に人が多い。


それに、酒やタバコの香りはあるものの、誰ひとりとしてその類ものを嗜んではいない。


何を隠そう今回の「ナンバー入れ替え戦」は今日だ。


そろそろ集合時間の6時になる。
本来ならそろそろ倉庫に移動する時間だ。
現地集合のやつもいるため、厳密にはいいのだが、今回は事情が違った。


総長と1ヶ月前から連絡が取れていないのだ。

あの人に限って喧嘩でやられるわけがないからその点に関しては幹部一同心配はしていないが、…キレてはいるようだ…。


その証拠に幹部と副総長が奥のカウンターで荒れている。


怖すぎてとてもじゃないがカウンターには近づけない。ナンバー5までの幹部以外は遠巻きにしている状態だ。


副総長の話では、総長は女のところに入り浸ってるらしい。あの総長が!?と正直なところ信じられない。


確かに女はいたようだが一夜限りの相手だったように記憶している。


特に女好きってわけでもないからそんなに頻繁に女遊びもしていなかったし。


女より喧嘩。を地で行く総長がそんなに入れ込むほどの女がどんなにいい女なのか多少興味はある…。


唯一、心当たりがあった武さんが総長を時間までに連れてきてくれるということだが、残りの時間を考えると失敗に終わった可能性が高い。


総長に勝てる奴なんているわけがない。

そのため、不在の状態でもナンバーの入れ替えには響かないが、入れ替え戦は総長と副総長の立ち会いのもと行わないと無効になるという暗黙の了解が存在するため、そうも言ってられないのだ。









幹部のピリピリとした様子がここまで伝わってくる。


こりゃ、今回の戦いは死人が出るかもしれねーな…


キィー…。

そう考えて身震いした瞬間バーの扉が開かれた。

待ち人来たり!とばかりにバーにいたメンバー全員が期待を込めて扉の方を見た。

それは幹部も例外ではない。









シーン…

今まで騒がしかったバーの中が一時騒然となる。







そこに立っていたのは総長でも、武さんでもなかった。



そこに立っていたのは紛れも無く…


「あ?なにガンくれてんだテメーら…」


漆黒の悪魔だった。

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