[携帯モード] [URL送信]

不思議な来訪者
5

「ンで?どうすんだよ」

フローリングに散らばった壮士の毛を片付けてひと心地ついた状態で俺はそう切り出した。


「いや、蛮と…ここ、いる」

「壮士さん!!お願いします!!いきましょ〜よぉ!!」


DVDが人質(?)にとれなくなった今、俺を動かすことはできない。

壮士は俺にしがみついてくるし、武は壮士の足にしがみついている。

武うぜー。


互いに一歩も譲らない様子の二人、収集がつかねーな。


俺はふと、間近にある壮士の髪を触った。

「蛮…」

すると見上げてきた壮士に俺は言った。


「とりあえず、その髪の毛整えてやるよ。ちょっとまってな」

そうして俺は、呆気にとられ、少し目を見開いた様子の壮士から離れた。











武side

うわー、蛮の毒のない笑顔なんて久しぶりに見たぜ…

総長、頬染めて固まってっし…。


蛮どっから見ても野郎だし、華奢でも、性格がいいわけでもねー。でも、総長にはスゲー魅力的に見えるらしい。


確かに男前な顔で女にはモテるがな。
このへんはホント納得いかねーが…


黙っていれば男前。だが、その実ひとでなしの犬好き。


従兄弟の俺が言うのもアレだが、ホント、なんでこんな奴がモテんだよ…。


俺は総長が早く正気に戻ってくれることを祈るぜ!!












蛮side

「おし。こんなもんだろ」

俺は床に新聞を敷いた状態で壮士の髪の毛を整えてやった。我ながらいい出来だ。

おふくろが使っていた散髪セットがまだあってよかったぜ。


武は絶句してっし、壮士は渡した鏡を嬉しそうに覗きこんでいる。


「おまっ、こんな特技があったのか!?」

漸く衝撃から立ち直ったらしい武が聞いてきた。


つーか、「初めてやったが、こんなもん見よう見まねでなんとかなるだろーが」

そんな驚くようなことじゃねーだろ。


それに俺は昔から人がやってるのを見れば大抵そいつよりもうまくできるしな。


そう言ってやると「理不尽だ…」っと言いながら武が沈んだ。


こいつ、理不尽なんて言葉よく知ってたな。馬鹿のくせに。


最後に壮士にかかっていたビニール製のシートを取ってやると、俺は素早く立ち上がった壮士に後ろのソファーに倒れこむ形でのしかかられた。


「蛮!蛮! あ、りがとう!!」

胸元にグリグリと頭を擦り付けて喜んでいる。
柄にもなく俺も表情が緩んだ。


「まぁ、うめーのは認めるけどよ…」

「そう、じゃない」


武がいかにも文句ありげに渋々認めると、間髪入れずに壮士が振り向いて武を睨みつけた。


武が息を呑む。

あー、壮士のやつキレてんな。


俺は、壮士の頭を撫でた。
すると、必死そうな顔でこちらを見た。


「ん?どうしたよ?」

「巧い、凄い!でも、それ、だけ違う!蛮、が、してくれた、なんでも、嬉し!!」







…ちょ、なにこの可愛い生き物。


俺としたことが、固まっちまった。

「どう、し」

フリーズした俺を見下ろしてくる壮士。
俺はほぼ無意識に目の前の可愛すぎるワンコを抱きしめていた。


「やべ、マジツボ…」壮士の耳元でボソッとつぶやくと「蛮!!」っと言って壮士も俺を抱きしめてきた。


「そ、総長!!ダメッスよ!!ま、待ってください!!我慢、我慢して!!」


手前では、何故か慌てて俺たちを引き離そうとする武の声がした。


[*前へ][次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!