不思議な来訪者 4 榛色と水底を思わせるブルーの二対の瞳に見つめられ、手を取られた。 「おれ、だけに、して」 ズキュン!! …しかも、小首を傾げながらの…やべ、心臓射抜かれたわ… 「えええええええ!!すでにそういう関係なんすか!?マジで!!!!!?????」 武うるせー。 そうか、こいつ、まだ俺の頼んだDVDをエロいもんだと思っていやがるのか。本当に面倒な童貞め。 俺はため息をついてから壮士の手をやんわりとほどいた。 「…見ねえから。よこせ」 中身はダメでも、せめて表紙くらいは許されるだろう。 ぶっきらぼうにそう言って手を差し出せば、嬉しそうに目を輝かせた。 今度はすんなり渡されたその包を俺は解き始めた。 「な、見ないんなら俺にくれよ!!」 「お前、欲しいのか」 「おう!!ちなみに、年上モノしかも、ナースとかの無修正だとなおよし!!」 なぜか偉そうにふんぞり返って己の性癖を披露するあたり童貞さ加減がまるわかりだ。 「ま、確かに(人間の年齢に換算すると)年上が多いかもな。(犬はいろいろな服を着ているし)ナース服着たのもいたはずだ。しかも、もちろん(犬の動画に修正ものがあるはずねーし)無修正だ。しかも、いろんな(たくさんの種類の犬)奴が出てきて楽しめると思うぞ」 解きながら話していると武の野郎は鼻息が荒い。「しかも、もしかして輪姦もの!?」等とニヤニヤしながらぼそぼそつぶやいていてキメェー。 その一方で、壮士は親の敵でも見るような目でDVDを睨みつけている。 そして、包は開封された。 「…!?」 「はぁっぁぁぁぁ!!!!!!??????」 パッケージの表紙には『ドキドキ!ワクワク!超キュート!犬の魅力たっぷり!魅惑の世界へようこそ☆』とある。表紙を飾るのは様々な種類の犬達。 ドーベルマン、トークシャテリア、ポメラニアン、ゴールデン・レトリーバー、アフガン・ハウンド、ボーダー・コリー、ビーグル、プードル、秋田犬、甲斐犬、土佐犬、芝犬、チワワ、パピヨン、チャウ・チャウetc… 俺の決心が揺らぎそうになる表紙だ。だが、俺は驚いている壮士の顔を見てから武に向かって言った。 「くっ!!涙を飲んで譲ってやるんだ…大切にしやがれよ!!」 「いやいらねぇーよ!!!!!!!!」 マジか死ね。 この貴重なDVDを俺が譲ってやるって言ってんだぜ!?ありがたく受け取れよ! 床に額を擦りつけて土下座しながら礼を言うレベルのお宝DVDなんだからな。 「はー、今ので一気にどっと疲れたわ…つーか、んなもんなら最初から言えよ。見てダメな理由もこれでなくなっただろ」 俺はその言葉にはっとした。 そうか!!エロDVDだと思っていたからこその観覧禁止だったなら! 俺は期待を込めてすぐに壮士を見た。 「だ、め。俺が、いるか、ら。…他の、奴も(犬)見ないで」 その一言で俺はがっくり項垂れた。 「ぇぇえええええええ!?ちょ、犬相手でもダメなんスか!?心せまッ!!…、いえ。なんでもないっす!!!!!!!」 武が蹴られた音を聞きながらも俺のダメージは計り知れなかった。 そのため、気付かなかった。 エロDVDだと勘違いした壮士が嫌がった意味を。 壮士が俺に向ける感情の正体を。 [*前へ][次へ#] [戻る] |