不思議な来訪者
2
朝食を食べ終わり、壮士が煎れたコーヒーを飲んでいると、玄関が開く音がした。
ドタドタと走る音もする…あの野郎…
バタン!!
「総長!!」
やっぱりこいつか…
これがため息をつかずにいられるか、もう数えるのも馬鹿らしくなるほどの不法侵入の数々。
何度半殺しにしても懲りねぇー。この鳥頭の阿呆が!
俺はやってきた武、もとい、不法侵入者に制裁を加えるべく立ち上がったが、それより早く壮士が奴の腹に蹴りをいれた。
ものの見事に壁に激突した武。
おいおい。家を壊すなよな…
武に向けて放った蹴りは見事なもので、壮士の強さがうかがえた。
それに、さっきの呼び方、俺の予想通りだったわけだ。
「コロ、ス」
自分が吹っ飛ばして伸びている武に近づいていく姿は鬼気迫るものがある。
壮士のやつマジギレしてんじゃねーだろうな。
これ以上家に被害が出る前に宥めねーと。
っとに、朝っぱらからたりーなー。
「んで?今度は何のようだったんだよ。事と次第によっては殴るぞ」
言い様に武の側頭部に拳を叩き込んだ。
「ッてぇぇぇっぇ!!!!」
痛みに転げまわる武を冷ややかに見据えた。
「ッチクショー、…もう殴ってんじゃねーかよぉ〜!!」
正直男が涙目っていうのがこんなにキモいもんだとは思わなかったぜ。
つーか、この俺に面倒なことをさせやがった罰だ。
んで、結局なんのようなんだよ。
壮士に用があるみてぇーなのは侵入の第一声ではっきりしてんだ。
俺に関係ねーだろ。
さっさと壮士を連れてどこへなりとも行くがいい。
このあと俺は今日届くはずの『ドキドキ!ワクワク!超キュート!犬の魅力たっぷり!魅惑の世界へようこそ☆』のDVDを観るんだからな!!
「そうだった!総…じゃなくて、壮士さん!!今日こそたまり場に来てくださいよぉ!!」
武、じゃなくて、馬鹿はそう言って壮士を見た。
「ヤ」
一方、壮士は間髪入れずプイっと嫌そうに顔を逸らした。ここから動く気はないようだ。
それだと、俺も困る。
実は、昨日からどうやって壮士を追い出そうか考えていたところだったのだ。
理由?
そんなもの、一人でじっくりDVDを観るために決まっているじゃないか。
「そんなこと言わないで行きましょうよ!壮士さん!!もう一ヶ月も顔出してくれてないじゃ無いッスかぁ〜!!」
あまりにきっぱり嫌がられ、一瞬怯んだものの、武が食い下がった。
「電話もメールもつながらなくて副…渉さんと飛鳥さんも心配してます!俺らも壮士さんがいねぇーといまいち締まらねーし…お願いします!!一度顔だけでも出してください!!」
ガバっと土下座までしている。
毎回毎回、厄介事か面倒事しか運んでこない武だが、今回ばかりは正直助かったぜ。
とっとと壮士を連れてけ。
「しら、ない」
それでも応じるつもりのない様子の壮士。
畜生、もっと効果的なつり方はねーのかよ。これだから、馬鹿で単細胞でミジンコ以下の能無しの阿呆は。
俺が、こいつマジで使えねーな…等と呆れていると、
「じゃあ、蛮も連れて行きましょう!」
…今何か、聞き捨てならねー言葉が聞こえたような気ーすんだけどな。
おい、壮士。そこで反応すんじゃねーよ…。
壮士の視線が俺に突き刺さる。そして数秒の後、コクリと頷いた。
「しゃー!!そうと決まれば、着替えて早速出ましょう!!」
武がガッツポーズをきめすくっと立ち上がった。
ここで異議を唱えたのは俺だった。
「おい待ちやがれ。勝手に決めてんじゃねーぞオイ」
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