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私立水晶華学園
救出

燈眞side

生徒会室にキーボードを叩く音と時計の針が動く音だけが響く。


俺は苛々を消すために壁を強く殴った。

「副会長、生徒会室の壁を破壊しないで下さい」


こんな時でも冷静な双葉に腹が立つ。コイツは雫をよく知らないからそんなに冷静でいられるんだ。

苛立ちは募るばかり。

「晴留!まだか!?」

「ちぃと待ってーな、焔火先輩。今全力で探してるわ」

怒鳴るように言った俺の言葉に飄々と返す晴留。
コイツはこんなんでも学院一の情報通だ。悔しいが俺でも晴留のパソコン操作能力にはついていけない。


雫のために何もできない自分が不甲斐ない…
俺は母の時も何もできなかった。でもそれは何の力もなかった子供の頃の話しだ。

今の俺には力がある。

俺はもう二度と大切な人を失いたくない。失わない。絶対に。


「ビンゴ。神咲先輩わ神娜澪の部屋におるみたいや」

突然キーボードから手を離し、椅子の背もたれに倒れかかった晴留は何気なくそう言った。


部屋だと!?

「ッ!!」

俺は晴留の言葉を聞いた瞬間生徒会室を飛び出した。
『焔火!!』

後ろから聞こえた声に返す余裕なんて今の俺にはなかった。


あの二人がついてくるもよし、俺には何もできない。とついてこないならそれでも良い。


雫は俺が助けだす。
俺が神娜に会ったのはたった一度。

俺の隣で女みたいな声でキャンキャン騒いでいたセフレが奴にどこかに引っ張り込まれた時だ。


セフレは泣きながら俺に助けを求めていたが、それには応じず、俺は神娜の方を見ていた。


奴の目を見た瞬間、俺は奴の中に闇を見た。


深く暗い闇。

その時俺は思った。
ああ、コイツは俺と同類なのかと…


だから雫から従兄弟だと聞かされた時に俺は驚いた。

神娜のことを可愛いなどと言っていたから、神娜は雫だけには危害を加えないと安心していたのが間違いだった。


もし、神娜が、約束を破り離れて行った雫を憎んでいたとしたら…



俺は学園から外にでると、寮に向けて走るスピードを上げた。

[before??][after!!]

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あきゅろす。
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