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冷たい手
息を吸い込むと、肺まで凍りつきそうな夜だった。
―冷たい手―
「星がたくさん見えますねー」
空気が澄んでるからですかねー、と呟く。
そ、っと握った手は驚くほど冷たかった。
「センパイの手、冷たいですー」
死んでるみたい、なんて。
手が冷たい人は優しい、と誰かが言っていた。
「優しいからだし。だって俺王子だもん」
「意味不明ですよねー」
吐いた言葉が外気に触れて白く凍るように溶ける。
あなたの独特の笑い方も同じように。
「寒いんで帰りたいんですけどー」
おー、寒い!っと体を震わせて見せた。
センパイがミーを包みこんで、もーちょっと。と呟く。
「風邪引いても知りませんからねー・・・」
「しししっ。お前のほうが体弱ぇーじゃん」
「ミーは風邪なんて引きませんー」
風があなたの金髪を夜空の藍にさらっていく。
「今はあったかいですからねー」
白い頬が少し色づいた。
自分で言っておいて照れてるミーはだいぶキてるかも。
「じゃあ王子が風邪引いても看病するやつがいるから大丈夫じゃん」
そう言ってあなたはまた、しししっと笑った。
冷たいあなたの手も少しは温まっただろうか。
(end)
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