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リリカル無自覚
初戦闘
〜リリカル無自覚〜
〜第七話〜
晩御飯の時間には
起きて完全回復した
なのはだったが念には
念を入れてお風呂の
入浴中に自分で
全身マッサージを
施しておいた。
明日の学校の準備等も
終わって寝るだけと
なった時間帯。
なのはの頭の中に声が
直接響いた。
心を震わせられた等の
比喩表現ではなくて…
ただ単純にそうとしか
表現出来なかった。
『僕の声が聞こえる
あなた達。
お願いです!僕に力を
少しでいいですから
力を貸して下さい!』
響いた声に勝手なこと
言うなと思う。
力を貸す気なんか
微塵も湧かない。
あなた達というのなら
少なくとも、もう一人
いるのだろう。
ま、謎のテレパシーを
助けようとする
正義漢もいない筈だし
万一いたところで
テレパシーも正義漢も
関わり合いになんか
なりたくない。
『えっと…頭の中で
話す感じでいいの?
こちら、私立聖祥大
付属小学校三年
久馬玲。
あなたは誰?』
『あ、失礼しました!
僕はユーノ、
ユーノ・スクライアと
いいます。
時間が無いので手短に
分かり易く話しますが
実は今現在化物に
襲われてる最中なので
助けて下さい!』
テレパシーの声には
抑えきれない安堵と
歓喜が溢れている……
どうやらテレパシーは
思念すらもお互いに
伝えられるらしい。
なのはにとっては正に
最悪の展開である。
何でアキラくんなの!
他の誰かなら!
そう、例え家族ですら
放っておいたのに!
運命や神という存在が
いるならば、いますぐ
私の目の前に出て来て
貰いたい。
有らん限りの力を込め
殴ってやるから。
なのはが一人で虚しく
現実逃避してる間も
更に事態が悪化。
『え?化け物退治…
助けてやりたいのは
山々なんだけどさ、
僕の体力は平均より
少し上程度だよ。
というかパンチや
キックで倒せるの?』
『いえ、僕の声が
聞こえたあなたには
資質があります!
魔法の資質が!
だから魔法の力を使い
倒して下さい!』
『…資質があるって
いきなりの実戦でも
使用可能なの?』
『普通は無理ですが
僕の持つデバイス…
魔法のサポートをする
道具みたいな物を
使えば大丈夫です!』
『分かったよ、正直
出来るかどうかまでは
分からないけど今から
向かうね…感覚で
位置が掴めるからさ。
それまで頑張って』
玲は多分駄目だったら
僕も死ぬと思ったが
言わなかった。
助けを求める人が
手の届く範囲にいて…
自分に助けられる力が
あるかどうかまでは
分からないが…
何もしないで諦める?
そんな選択肢は
少なくとも久馬玲には
選択肢にも考慮にも
値しないのだ。
玲もなのはと同じく
後は寝るだけの時間に
テレパシーが聞こえ
話(と言えるか謎)を
してたが最初から
助けに行くつもりで
準備をしていた。
着替え済みなので家の
外へ飛び出すだけ。
「いってきます!」
『いってらっしゃい』
既に駆け出した後だが
呑気すぎる返事に
コケそうになる。
夜中に飛び出すのに
一切怒らないどころか
笑顔で見送る両親。
信頼してくれてるのか
放任なのか判断に
迷う両親である。
一方なのはも理由こそ
異なるが着替えは
済ませていた…。
アキラくんの性格なら
謎のテレパシーでも
助けようとする。
昨日までのなのはなら
どうせ、いつもの
彼らしく全てを何ら
問題なく終わらせると
思っただろうが今は
知っているのだ。
彼は完璧超人でも
ましてや神でもなくて
普通に出来ることも
出来ないこともある
男の子であると。
その普通の男の子は
夢にまで焦がれた
友達になってくれた上
なのはの苦悩を
晴らしてくれたのだ。
おかげでなのはが
どれだけ救われたかは
七日七晩語っても
語り尽くせない。
だから、なのはは玲の
危機を見逃すなんて
死んでも出来ない。
明日の授業で使う
体育館シューズを履き
窓を開けた。
リミッターを再び外し
窓枠に両足を掛け
立ち幅跳びの要領で
頭を上の窓枠等に
ぶつけない様に跳躍。
1階の屋根と庭、塀を
飛び越え道路までの
大ジャンプである。
軽く世界記録を
更新した気がしたが
別にどうでもいい。
着地時に結構な激痛を
覚えたが無視して
走り出した。
位置が近い玲の方が
早く現場に到着…
なのはの家からは少し
距離があるのだから
当然の結果だ。
尚、道中で二人とも
一瞬周囲の音が消える
現象に巻き込まれるが
気づいた上で無視して
現場へ急行。
現場は槇原動物病院…
辿り着いた玲は疑問を
覚えた。
何故ここなのだろう?
しかし、そんな疑問は
後回しで自らの感覚に
従い足を動かす。
病院の庭にいたのは
朝のフェレットと
黒く大きい毛玉の様な
フォルムの異形。
フェレットは折れた
木の上にいて、
黒き異形は折れた木の
下敷きになっている。
「良かった!
よく来てくれました!
ありがとうございます
…助かりました!」
フェレットが玲に
飛び込んで来たので
反射的に受け取ると
礼を言われた。
喋った!という驚きは
後回し。
「君がユーノくん?で
合ってるね…僕は
どうすればいいの?」
「これを持って僕の
言葉に続けて下さい」
渡された赤い宝石を
手に持って、ユーノを
肩に乗せる。
『我、使命を受けし
者なり。
契約の下、その力を
解き放て。
風は空に、星は天に、
輝く光はこの腕に、
不屈の心はこの胸に。
この手に魔法を、
レイジングハート、
セットアップ!』
言われた通りにしたが
何も起きなかった。
「これでいいの?」
「…いえ、あなたは
レイジングハートとの
適正がなかったらしく
失敗したみたいです」
一瞬の間。
「ひょっとして打つ手
無しとか?」
「いえ、まだです!
もう一人の方に助けを
求めましょう」
「もう一人って…?」
「私だよ!」
振り返った玲が
見たのはなのはだ。
「アキラくん、怪我は
ないね…良かった。
それで、私は
何をすればいいの?」
「これを持って
ユーノくんの言葉に
続けて!」
なのはが詠唱を終えて
今度は明確な変化が
起きた。
『Stand by Ready,
Set up』
起動音めいたものが
レイジングハートから
響いた直後に
飛び出した光が大気を
震わせた。
「想像して下さいっ!
貴方が魔法を制御する
魔法の杖と身を護る
強い衣服の姿をっ!」
ユーノの言葉に
なのはは身を護る
衣服だけをイメージ。
杖はいらない、と
思っていた。
そもそも、なのはは
したくもない人助けを
させられて激しく
イラついている。
しかし、元凶たる
ユーノを殴り潰すのは
玲が仲良さそうに
してるから却下。
このままではなのはの
ストレスが貯まる
一方かと思われたが、
目の前には黒き異形と
八つ当たりには
最適な的…是が非でも
殴り潰してやりたい。
だから、わざわざ
杖を使ってやる道理は
なかった。
直接、殴り潰すのが
何よりのストレス発散
なのだから。
ひたすら動き易い
軽装をイメージすると
レイジングハートの
光がなのはを包む。
やがて光の中から
現れたのは
黒いタンクトップ、
丈が短すぎる膝上の
ジーパンを身に付けて
肩から羽織った
白いマントとマントを
胸元の赤いブローチで
留めたなのはの姿。
リボンも外し髪を
おろしている。
「…これが魔法」
誰の呟きだったかは
分からない。
玲か、なのはか、
あるいは、両方かも
知れなかった。
「成功だ!って、え!
杖は!?」
「私自身が杖だよ」
なのはがユーノの
叫びに返事をした瞬間
木の下敷きになってた
異形が身を起こし
天に向かって吠えた。
ユーノと玲の顔が
一瞬で青ざめる。
『しまった!』
ハモった二人と裏腹に
なのははニヤリと
意地の悪そうな笑みを
浮かべた。
ただ無抵抗の相手を
いたぶるだけより
抵抗する相手を強引に
叩き潰す方がストレス
発散になる、と
なのはは考えたのだ。
『Frash move』
赤いブローチに文字が
浮かび機械音が響き
なのはは一瞬で異形の
眼前にまで移動。
『Frash impact』
眼前の標的に狙い通り
拳を叩き付けると
別の文字が浮かんで
機械の音声が響く。
大砲が着弾した様な
音が鳴り響くと同時に
桜色の光が爆発し
拡大していく。
「これで終わり?」
光が納まるとなのはは
足下に落ちてきた
青い宝石を見下ろし
呟いた。
「いいえ、まだです!
ジュエルシードの
封印を!」
「どうすればいい?」
「心を澄まして!
そうすれば貴方だけの
呪文が浮かびます!」
なのはは精神を集中
させるべく目を閉じて
瞑想する。
再び目を開いた瞬間
足下の青い宝石を掴み
詠唱開始。
「メルゼス・マジカル
バイオレンス!
ジュエルシード封印」
桜色の光がなのはの
両の掌から周囲にまで
溢れ出した。
直後に青い宝石が
胸元の赤いブローチに
吸い込まれる。
「これで終わりです」
ユーノの呟きを聞いた
なのはの変身も
解除される。
服が元に戻ったのだ。
「なのはちゃん、
ありがとう。
君のおかげで僕たちは
助かったよ」
「いや、アキラくんは
気にしなくていいよ。
でも、フェレットォ!
アキラくんを危険に
巻き込んだのは
お前だったよなぁ!?
どういうつもりで
巻き込んだか納得の
行く説明をしなよ!
でなければ、私が
お前を…!」
「はい、ストップ」
ヒートアップする
なのはを制止したのは
玲だった。
「僕が自分で首を
突っ込んだんだから
仕方ないよ」
「でも…!」
「いいんだよ」
「………分かったよ」
なのはは渋々とだが
引き下がった。
「ユーノくんも
気にしないでくれ。
僕が自分から首を
突っ込んだんだから」
肩の上で悄気ている
ユーノを励ます。
「…ありがとう」
「それぞれ話したい事
あるみたいだけど…
夜だし体力使ったし、
詳しい話とか面倒事は
明日に回そう」
「あはは、確かにね」
「僕は君達がいいなら
それでいいよ」
ユーノから礼を聞いた
玲は詳しい話を
後回しにする提案。
なのはもユーノも玲の
案に賛成した。
「しかし、派手に病院
壊れちゃったから
愛先生も困るよね」
「あ、いえ、それなら
大丈夫です。
結界を解いた後なら
この通りです」
玲の不安は一瞬で
払拭された。
ユーノの言葉と同時に
壊れていた病院が
どこも壊れてない
元通りの姿になった。
「これも魔法なの?」
「うん、封時結界って
いって周囲の空間を
切り取っていたから…
この中では暴れて
建造物等を壊しても
現実世界には影響が
ないんだよ」
「便利でいいなぁ…、
悪いが、ユーノくんは
自分が入っていた
ケースに戻って後一日
待っていてくれ。
明日になったら僕が
引き取りに来る手筈に
なってたからさ。
手続き踏まないで
勝手に引き取ったら
面倒事になるんだ」
「…あ、そうですね、
分かりました」
玲の肩から病院の
窓枠にジャンプした
ユーノは窓を魔法で
開け振り返る。
「あの、今日は助けて
頂き本当にありがとう
ございました」
「いや、実際助けたの
なのはちゃんだけど…
皆無事で良かった。
じゃあ、ユーノくん、
また明日な」
「ま、アキラくんが
それでいいなら私から
言うことはないよ」
ユーノの改まった礼に
返事をする二人。
「はい、また明日」
ユーノが別れを告げて
病院の中に入ると
窓が自動的に閉まる。
中からユーノが魔法を
使ったのだろう。
「あ、なのはちゃん、
家まで送るよ」
「ありがとう」
礼を言いながらも
なのはは手を伸ばす。
なのはの意図に玲も
気づき手を繋ぐ。
先程の戦闘を微塵も
感じさせない穏やかな
雰囲気…度胸があるか
神経が図太いのか。
「なのはちゃん、携帯
持ってる?」
「うん」
「よかったら、番号と
メアド交換しない?」
「うん、喜んで」
なのはは満面の笑顔で
即快諾した。
嬉しかったのだ。
一度も言われたことが
ない言葉で夢にまで
誰かに言われることを
焦がれた言葉だ。
アドレス帳には自宅や
翠屋、家族の番号
しか入ってないので
見たくないからと常に
電源を切っていた。
慌てて取り出し電源を
入れた。
「じゃ、赤外線で」
「え?携帯に太陽光が
関係あるの?」
「……分からないなら
僕がやってもいい?
ちょっと貸して」
手渡してすぐに携帯が
返って来た。
「そのまま構えてて」
番号とアドレスを
交換した表示が出た。
『久馬玲』の番号と
アドレスがなのはには
愛しくも誇らしくも
感じられた。

〜作者後書き〜
初戦闘で活躍したのは
なのはさんのみ。
オリ主とユーノは
戦闘における見せ場も
なく初戦が終了。



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