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リリカル無自覚
時の庭園突入
〜リリカル無自覚〜
〜第二十七話〜
時の庭園最下層で部屋の
中央部分にある大きな
シリンダーの様な形状の
水槽に入っているのは
特殊な液体と傷一つ
ない状態に復元された
丸裸の少女の遺体。
「アリシア…」
水槽を愛おしげに
見つめるのは露出過多な
バリアジャケットを纏う
黒い長髪を下ろした
妙齢の美女。
プレシアにとっては既に
日課となっている習慣。
いつも通りの場所で
いつも通りにアリシアの
遺体へ呼び掛けていた。
死体に呼び掛けることを
日課にしている辺り
隠しきれないプレシアの
狂気が滲み出ている。
彼女が返事をしないと
他の誰より理解していて
尚もプレシアは彼女へ
話し掛けるのを日課とし
続けているのだ。
唐突に侵入者を知らせる
警告音が鳴り響いた。
プレシアの脳内が疑問で
埋め尽くされる。
ジュエルシードの流出を
事件ではなく事故として
処理した管理局が
介入して来るのはおろか
二週間しか過ぎてない
現状では未だに
第九十七管理外世界に
着いてすらない筈だ。
よって、侵入者は
管理局の者ではない。
では、フェイトと
名付けた人形と人形の
使い魔が現地住民にでも
負けたのか?
この可能性もないわねと
プレシアは考えた。
フェイトとアルフを
駒としか見てない彼女は
二人の戦力を把握し
管理局の執務官クラスと
戦闘にならない限りは
負けないと分析しており
侵入者が誰なのか益々
分からなくなった。
しかし、頭では色々と
考えているプレシアだが
行動に移していた。
この部屋にいる限りは
魔法を使っても肉体への
負担は最小限で済むので
彼女の魔力光である紫に
輝くサーチャーを飛ばし
目前の中空に超極薄の
ディスプレイを形成させ
映像を映し出していた。
映っていたのは複数の
侵入者達が大量の傀儡兵
相手に戦闘をしている
場面だった。
侵入者の中には魔力を
持たない者も多数いるが
大量の傀儡兵を相手に
見慣れない奇妙な形の
剣で斬ったり素手で
砕いたりと大暴れ。
むしろ、魔力持ちの
三人が戦闘に不参加の
状態で進んでいる。
この三人の魔力ランクは
ユーノ・スクライアが
事前に調べた魔力よりも
一段階上のA+にまで
向上している。
全体指揮を執る紅い
バリアジャケットを纏う
少年はS-で、軽装の
バリアジャケットを纏う
少女がS+である。
魔力を持たない者が
侵入してきている時点で
第九十七管理外世界の
現地住民達と見当がつき
フェイト達が負けたと
気づいたプレシアは
彼女達への評価を既に
人形からゴミへと
格下げしていた。
しかし、何故魔力持ちの
三人は戦闘に参加せず
進んでいるのだろうか?
あの少年の指揮は名前を
呼び僅かに指や声で
示唆する程度なのだが
息も動きも合っている。
事前に合図を決めている
様な動きの法則性すら
見えないがプレシアには
思い当たる節が一つ。
彼女が管理局に務める
現役時代の頃聞いた
眉唾物の噂である。
曰わく管理外世界特有の
レアスキルがある。
そのレアスキル行使には
魔力の有無は関係なく
魔力至上主義世界の
管理内世界、特に我々
ミッドチルダの者には
理解不能な力である。
こんな噂を、ただでさえ
魔力至上主義世界の
ミッドチルダで信じる
者は誰一人としておらず
良くても笑い話の一種で
悪ければ話す者の正気を
疑われかねなかった。
当時のプレシアでさえ
信じていなかった。
だが、現にサーチャーが
映し出す映像には彼女の
理解不能な力が働いてる
様にしか見えない。
魔力を持たない者達が
大量の傀儡兵を相手に
大暴れしていられるのも
その力故だろう。
しかし、彼の指揮は多分
それらの力とは違う物。
あれは管理世界の内外を
問わない信頼による力。
指揮官が前線にいる
味方の全員から信頼も
信用もされるのが前提で
理屈ではなく本能で
指揮官の指揮が自らの
判断よりも優れていると
理解し為せる奇跡。
その奇跡の恩恵もあって
魔力を持たない者達で
戦えてはいる様だが
全員で戦闘に参加すれば
より安全だろうに何故?
プレシアが疑念を抱くも
答はサーチャーが拾う
音声からもたらされた。
『アキラ、やはり僕達も
戦闘に参加すべきだ!』
『耐えろ、ユーノくん!
僕となのはちゃんは
プレシアさんと戦うから
魔力を温存しないと
いけないし、君は皆を
転送する必要があるから
傀儡兵達との戦闘には
参加出来ないんだ!
皆、命懸けで自分の
役割を果たそうとして
頑張ってるんだよ!
今は皆を信じて進め!』
『…っく!分かった!』
ユーノ一人が飛行魔法で
移動しており他は全員
高速で走りながらも
戦闘や移動を行う。
身体能力の差が如実に
表れていた。
侵入者側は敵ではなく
味方に戦慄を覚えた。
吸血鬼に自動人形に
剣術家と普通有り得ない
身体能力を持つ面々が
同行者なので学者であり
魔法使いでもある
ユーノだけ飛行魔法
使わなければ置き去りに
されかねない程速度に
開きがあるのだ。
玲となのはの二人だけが
尋常ではない。
この二人は身体能力が
数週間前まで一般人並で
なのはに至っては学校の
体育にさえ苦手意識を
持っていたので平均より
下だったと言える。
僅か数週間で身体能力と
体術の練度を裏社会
有数の面々より更に上の
別次元まで引き上げて
余裕を持って走って
付いてきている。
何よりも恐ろしいのは
これでも身体能力に制限
掛けた状態で、尚且つ
足音を殺しながら遅れず
付いてきていること。
戦闘に参加してないのを
考慮しても…この速度で
足音を綺麗に殺しながら
走るなんて芸当を
体術のみで体現するのは
武術の達人である
御神の剣士にも月村の
吸血鬼や自動人形さえも
不可能にも関わらず
数週間前まで素人だった
二人組がやってのける
事実が一体どれだけ
異常なことか本人達は
理解すらしていない。
あの二人は、やろうと
思えば間違い無く気配も
殺しながら現状の速度で
移動や戦闘も出来ると
勘で分かっていたが誰も
突っ込まなかった。
気配を殺さない理由は
会話しづらくなるからが
主な理由である。
サーチャーに気づいた
素振りさえ見せず大声で
会話する侵入者達を見て
プレシアは呆れた。
サーチャーは音声を
拾えるのだから戦闘音に
呑まれない大声で話を
続ければ丸聞こえだ。
更に少年魔導師二人の
会話は続く。
『ジュエルシードを全部
持って来ちゃって本当に
良かったのかな?』
『街に置いてくる方が
もっと危ないよ!
ジュエルシードを持つ
僕達に狙いが集中すれば
無駄な犠牲は出ない!
決着を着けてやる!』
『場所は分かるの!?
エリアサーチを使って
調べないで大丈夫!?』
『エリアサーチなんか
使うまでもない!
ここに来てから、ずっと
とんでもなく大きな
魔力を最下層から感じ
続けてるんだ!
間違いなくそこだよ!』
目当ての情報を聞けた
プレシアは笑った。
「あはっ!あははははは
ははははははははっ!」


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