沢田さん家の兄弟事情 目覚ましが朝を告げた。 もう朝なのか、と綱吉は寝ぼけながら手探りで目覚ましを止めようと奮闘する。 かちり、という音が鳴って目覚ましが鳴り止むとベッドの中で自分ではない何かがもぞもぞ動くのを感じた。 その方向に目をやると黒い頭、そしてひよこ柄のパジャマ。 「つなよしー…もうちょっとねてなよ。」 「恭弥兄さんは良いかもしれないけど俺は今起きないと確実に遅刻するから。」 そう言って腰に絡みついてくる兄の腕を解くとベッドから降りた。 つくづく勿体無い兄だと思った。 美形なのである。美形なのだがブラコンなのだ。 毎朝ベッドに入ってくる。部屋の鍵を閉めてもピッキングをしてまで入ってくる。 朝起きたらパジャマを脱がされてるところだった時には警察を呼んでやろうかと思ったくらいだ。 それくらい残念な兄なのだ。 隣で誰が何していようと驚いてはいけない。 弱みを見せれば相手のペースに巻き込まれるだけだ。 それが綱吉の生まれてこの方14年のうちに学んだ教訓だった。 「全く、つまらないね。もう兄さんとは遊んでくれないのかい?」 実に悲しそうな顔をする兄だが綱吉はこれが演技だと知っているので冷ややかな顔で遊ばない、とだけ言って部屋を後にした。 階下におりるとふんわりと美味しそうな匂いが漂ってきた。 キッチンで料理するのはもう1人の兄である骸だ。 「綱吉くんおはようございます。」 「うん。おはよう。」 こちらもまた美形である。 しかしまた残念でもある。 「今日も可愛いですね。可愛すぎですよ!食べちゃいたいくらいです!はあはあ。」 これも何時ものこと。 残念なのは思考回路だけではなく、髪型とか、そう。ふりふりのくまさんエプロンを装着している辺りもである。 そのくまさんエプロンは綱吉が小学生の時にプレゼントしたものなのだが綱吉がそんなことを覚えてるわけもなく、ただの兄きもっ☆要素になっているので不憫な兄なのかもしれない。 そんなこんなで沢田家の朝は始まった。 |