レンアイメイキュウ
初めて言葉にした願い
「取り敢えず、退院できてよかったわ。今週は学校休む?」
「どうしよ…。」
正直、先輩にはあまり合いたくない
あの事聞かれたくないし、告白の返事なんてもっての他だ
「行きたくないなら…行かなくてもいいのよ?」
美音…?
「紫空…私ね、本当はあまり学校に行って欲しく無いの…。こんな事、身内の言う事じゃないって分ってる。でもね、紫空にはもっと…楽しんでもらいたい事が沢山あるの。」
"だからね…"と美音は続けた
「行きたくないなら、行かなくていいのよ?勿論、行きたいなら話しは別よ。紫空の自由に、やりたい事をやりなさい。」
自由に…やりたい事
今まで俺には無縁だった
ずっと父さんの言う通りにして、やりたいピアノも諦めて、絵を描き続けた
賞はいくつか貰ったけど、あんな絵つまらない
描くなら…もっと『心』のある絵が描きたかった
自由に、束縛されず、『心』を表現したかった
ピアノだって…本当は今からでもやりたい
やりたい事は、沢山ある
でも、やりたいって思うと『行きたい』って思ってしまうから…
俺は『生かされている』んだっていう意識が薄れてしまうから
罪の意識が消えないように、今までずっと我慢してきた
それに、美音達にも迷惑をかけてしまうから…
「紫空、余計な事は考えなくていいの。やりたい事をやりなさい。私、紫空がもっと笑っているところ、見たいわ。私達はそれで充分よ。」
言いながら、ぎゅうっと強く抱き締められた
駄目だと…分っていても
溢れる思いは止められなくて
「いい……の?」
「ええ。勿論。」
「また…美音に…迷惑、かけるかも…しれない。光幸先生にだって……っ。」
「あら、光幸ならむしろ迷惑かけて欲しいはずよ?私だって…紫空の心配、させて欲しいわ。子供のいない私達の、子供みたいだもの、紫空は。ね?」
「ぃ……た…。」
いつの間にか、強く強く、美音に抱き付いていた
まるで、掴んだ自由を離さないかのように
そして、想いは涙となって溢れゆく
泣きじゃくりながら、初めて言葉にした想い
「…生きたいっっ。」
それは、
小さな小さな少年の
大きな大きな願いだった
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