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レンアイメイキュウ
廻り出す歯車
side:美音

ガヤガヤガヤガヤ

「あ、光幸。久しぶり。今平気なの?」

「久しぶり。今はお昼だからね。こっちだ。」

光幸の後につき、紫空の病室を目指した

「ここだよ。」

コンコン

「紫空君。入っていいかな?」

返答は無い

ガラガラ

うそ…
本当に紫空なの…?

目の前にはやせ細った紫空の姿
どこか哀しげに、そして儚げに窓の外を見ていた

「し……き…。紫空!」

ガバッ

「え…?美音?」

「久しぶり…、紫空。」

「久しぶり…美音。どうしてここに…?」

「僕が言ったんだ。」

(視点変わりますside:紫空)

光幸が後ろから言った

「光幸…先生。そっか…。」

その時だった

コンコン

「?どうぞ。」

開いた扉の向こうには、叔父の秘書がいた

「失礼致します、紫空様。」

またか…

「今回の資料はこちらになります。出来上がり次第ご連絡をお願い致します。」

「も……無理。」

「紫空…。」

「もう前みたいに書けない…。あの人が望む絵は…もう書けない。」

俺は初めて反発をした

そもそも俺の家は代々芸術関係に強い家柄で、それなりに金持ちだった

俺も小さい頃から音楽や美術等といったあらゆるものを叩き込まれた

父さんは有名な画家だったし、母さんも有名なピアニストだった

だから俺は、一族の期待を一身に受けてきた

天才の2人から生まれた子はさらに天才だ

と言われながら

俺としてはピアノの方が好きだった
母さんが丁寧に楽しく教えてくれた事もあって、あまり強要されているという意識が無かったからだ

でも、父さんは反対した

家を出た今も、コンクールや展覧会が開かれる度に俺に絵を書かせてくる

最初は従順に言われるがまま書いていたけど、それももう……

死にたいと願った俺に…
もう……絵は書けない

「私には何も出来ません。それを決めるのは旦那様であり、それに従うのが私の役目です。」

「……っ…。」

悔しい

従うことしか出来ない自分が

抗う事の出来ないもどかしさが

「もう…いいでしょ…。紫空を…これ以上振り回さないで。」

美音……

隣では、光幸先生に肩を抱かれた美音が…泣いていた

「もう紫空は自由になっていいのよ…。どうして叔父様は縛りつけるの…っ!紫空のやりたいピアノもやらせてあげないで!!沙羅さんの…っ…紫空は…沙羅さんの子供よっ!」

美音…っ

いいのに
俺なんか…いいのに

「…それでわ、失礼致します。」

そう秘書が言ったのと同時で美音が「どうしてっ!!」と叫んだ

美音が悲しむ事なんて無いよ

全部俺が悪いんだ
…全部

母さんの事も全部俺が悪いんだよ


だから美音…

泣かないで

お願いだから

そんな悲しい顔しないでよ

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あきゅろす。
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