一筋ノ光
五
一筋ノ光 ― 五 ―
「一緒に来てくれるんだね。」
艶やかな着物に身を包んだソイツは、妖艶な笑みを浮かべそう言った
握った手
俺はここから出たい
外の世界を、見てみたいんだ
本当は、マサとが良かったけど……マサは違ったのかな
とったその手を数年後後悔するとは知らずに、俺はそんな事を考えていたんだ
「決まりだね。君の名前は?」
「……無い。」
俺のその言葉に、まだ意識が残っていたマサが驚愕とでもいう程目を見開いた
俺はそれを一瞥し、もう一度目の前の人物に向き直った
「それじゃあ私がつけてあげる。……零、零(レイ)だよ。おいで、零。」
そう言って手を大きく広げる
それを見て俺は、その胸に抱き付いた
マサとは違う、人の感触
人と触れている
ただそれだけで、嬉しさが込み上げてきた
「零、俺は零。……アナタは?」
「私は氷凰(ヒオウ)。」
「氷凰、宜しく。」
それが俺にとって二度目となる、人を感じた瞬間だった
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