私立輝月学園
6
あぁ、見た事ある……こんな瞳を。
これは、確か―…‥
誰だっけ。
んー、駄目だ……思い出せない。
あと少し、というところでひっかかり、結局モヤモヤ頭の中で渦巻くだけだった。
それより……目の前のコイツから離れたい。
俺は目の前の男がもう誰だってよくなっていた。
取り敢えず離れたい、それだけが頭の中にあった。
「素がこんなんで悪かったな。それから、俺からも一つ言わせてもらうけど、お前じゃ俺の事なんて分んねーよ。」
「え……?」
――チンッ
「あ、着いた。」
俺は嬉しさからか安心からか、いや、多分両方だろう。
心の中でホッ、と一息ついていた。
「それってどういう……っ。」
俺はそんな疑問の言葉を無視してエレベーターを降りた。
離れたい。
とにかく、今は、早く……。
「ここが理事長ね……。」
目の前にはもの凄く豪華な大きな扉。
オマケに金色に塗られ、周りを綺麗に飾ってある。
つか、たかが理事長室の扉に金使うなよ……呆れた。
やっぱり金持ちの気持ちは理解出来ない。
「それじゃ、慎先輩。案内ありがとうございました。」
俺はペコッとお辞儀をした。
一応、優等生だから。
素がバレたけど、まぁ一応ね。
「あっ、待っ……!」
バタンッ
制止の言葉は、理事長室の扉を閉める音によってかき消された。
俺は何故か、離れられて嬉しいはずなのに、頭の中のモヤが増すばかりだった。
気付けば良かった、ここで。
これが本能による危険信号だって事に。
※ここまで加筆修正済 09/08/04
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