私立輝月学園
5
「あとはこのエレベーターに乗るだけだよ。行こうか。」
「えっ、エレベーターだけなら俺だけでも……。」
「あーこのエレベーターはちょっと特殊でね、専用カードキーがないと開かないんだ。」
金かけすぎだろ、どう考えても。
ていうかなんでまたそんなセキュリティに。
たかが理事長室だろ……。
まぁ、金持ちだけどさ。
「そうなんですか……。すみませんわざわざ。」
「いいよ、気にしないで。」
―チーンッ
「あ、来た来た!」
あんましこいつと居たくないなぁとか思ってるのは秘密だ。
言いたくても言えないし、今の性格じゃぁね。
で、今エレベーターの中。
「ねぇ雪。」
「何ですか?」
「その眼鏡、伊達?」
「ち、違いますよ。」
「ふーん、じゃぁとって。」
じゃぁってなんだ、じゃぁって!!
伊達だったらとっての間違いだろ!
つーかそんなサラリとにこやかな笑顔付で言うな!
「い、嫌ですよ。」
「なんで?」
実は変装アイテムなんですよ☆
なんて言えるか!!
「目がものすっごく悪いからです。もうこの眼鏡無しじゃ生きていけませんよ。いわば体の一部です。」
「そ、じゃぁ力ずくだね。」
そう急に言われ、驚きのあまり一瞬動けなかった丁度その時、先輩の手が俺の顎を掴んで無理矢理上を向かせた。
うわ、まつ毛長っ。ていうか、顔超綺麗……。
なんか本当男なのが勿体ない。
段々顔が近付いてくる中、俺はそんな呑気な事を考えていた。
予想打にしなかった事が起きると、なんだか全てがスローモーションのように感じられる、という事が初めて分った。
そうして俺のソレは、目の前にある綺麗な顔の主のアレによって塞がれた。
「ふっ……はぁっ、やめ……!」
残念な事にこれがファーストキスな俺は、上手く呼吸が出来なくて早々に酸素を求め口を開いてしまった。
____
勿論しまったと書いているのだから、俺にとってとーっても嫌な……というか人生最大の汚点を冒してしまったのだ。
そう、目の前の綺麗な顔の主はそれ見逃さなかった。
俺が口を開けた瞬間にぬめっとした生暖かいものが入り込んできた。
まぁ、それは舌な訳で。
俺の口内を周到に弄ばれました……。
思考とは反対に身体は素直なもので、その俺にとっては大きすぎる快楽に溺れていた。
頭がボーッとして、何も考えられない……。
ん?カチャッ??
……、あ、眼鏡。
俺はカチャッという音で、自分がかけていた眼鏡が故意に外された事を認識した。
「んんっ!はぁっはっ……くそっ、離せ変態野郎っ!!」
カチャッという音で意識が覚醒した俺はどんっ、と先輩の胸を押しやった。
それはもう力一杯。
つか眼鏡っ!!俺の眼鏡っ!!
体の一部っっ!!
「はぁっはぁっ……。男に何しやがるんだてめぇっ!!てか眼鏡返せっ!!」
俺は肩を上下に動かし息をしながら言いはなった。
目の前の男は、そんなの聞いて無いって感じに只驚いた顔をしていた。
何驚いてんだよ。
それより眼鏡!
「……綺麗。雪、やっぱり眼鏡伊達だったんだね。まぁ、綺麗な顔を隠すには最善の策かな。」
「伊達で悪いかっ。眼鏡返せ、この変態野郎。」
「んー、顔見れたしいいよ。はい。」
と、微笑みながら眼鏡を渡してきた。
俺は乱暴に受け取ると、眼鏡をかけ直した。
「つれないなぁ。あ、そうだ雪。言っておくけど、僕に隠し事は通用しないよ?」
「なんでだよ。」
「う〜ん、勘がいいから?かな。ていうか、そっちが素なんだね。」
何もかも見透かしたような瞳で笑いながら言った。
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