パラレルワールド
3
「いや〜久しぶりだね!コウナ君」
「橘さんも元気そうで何よりです。」
ぎゅっと抱きしめ両頬にキスを送るこの男性は橘さん。
先程も紹介した俺達を支援してくれているこの学園の理事長。
「しかしコウナ君が高校生か〜しかも私の学園っていう…制服似合ってるよ」
「もはやコスプレの域ですよね」
「いやいや、コウナ君は年齢不詳だから問題ないけれども…うん、自分で呼んでおきながら言うのもなんだが、色々と気をつけてね。」
「…?」
そう。この学園に俺を呼んだのはこの理事長である橘さん。仕事の依頼をしてきたのである。
「私もまさか自分の学園でこういうことが起きるとは思わなかったが…責任者である以上、今回の件は解決したいところなんだ。」
「わかってますよ。その為にこの俺がきたんですから。任せてくださいって。」
「頼もしい限りだ。出来る限り学園内でのサポートはさせてもらうつもりだ」
「ありがとうございます。」
そういって橘さんが渡してきたのはプラチナのような色のカードに、ゴールドのスカーフ。
「これは?」
「この学校について調べてきたかい?」
「あー、まぁ少しだけ。」
「その様子だとほんの僅かだろう?」
全く、と少し呆れ笑いをもらす橘さん。
ごめん、と手を合わせ首を傾げるとくしゃくしゃっと頭を撫でられる。
「可愛い可愛いコウナ君の為に用意したんだよ。
このカードは鍵。うちの学校や寮内はすべて鍵が電子式でね。カードキーなんだ。
一般生徒と役職に付く生徒、一般教師、専門教師など様々な条件によって渡す鍵を変えて管理している。
ちなみに、このカードはプラチナカードといってね、理事長、警備長にのみ渡しているカードだ。」
ようするに生徒はおろか、教師達ももてないようなカードというわけで。
どうやら部屋に入る他、設備に関するロック解除などありとあらゆる部分を管理することに使えるようだ。
「このスカーフは?」
さすが金持ち学校といったところか。肌触りのよい金色のスカーフを持ち上げると、橘さんは俺の手からスカーフを取り上げ、指定のセーラー服にリボン結びをする。
「うちの制服はね、海も近いこともあって、水兵のセーラー姿を模した制服なんだけど、この制服のリボンは学年だけでなく、ある特定の条件によっても色が変わるんだ」
「……ストップ。カードは確かに特別なものを持たないと調査するのに難しいかもしれないよ。けど、スカーフは別にいいんじゃないの?あんまり目立つようなことされると逆に周りの目があって調べられな…」
俺の言葉に首を振る橘さん。
「そんなことはないよ。この学園では才能や力あるものが上に立つ。だからこそ、皆唯一の存在になるべく頑張っているんだ。だから、この学園で何かを得るためにはそういった者達からの憧れや支持を得なければならない。編入生ということで注目は浴びるかもしれないが、それだけでは足りないかもしれないし、もう一押ししておこうと思ってね。」
「うーん…」
金色のスカーフに視線を落とす。
ふと、気づいたことがあった。
「錨の刺繍…」
「あぁ、それね。うちの校章。」
しまっていた制服の胸ポケットからカードを取り出す。
校章と同じマークが入ったカード。
「これでわかるだろう。」
「なるほど…犯人はこの学園の内部犯ってわけか。」
「まぁとにかく。このスカーフをつけていて悪いことはないから。さ。そろそろ時間だし職員室まで案内しよう。」
時計をみると時刻は11時過ぎ。
3時間目が始まった頃か。
編入初日は授業には出ずに理事長に校内を案内してもらうことにしている。
職員室は理事長室がある棟の1階。
階段を降り今は授業中のため、専門学科の教師で授業のない者しかいない。
皆授業の準備やらで急がしそうで、少し遠慮がちに失礼しますと一言伝え中に入る。
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