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パラレルワールド

アテナにお願いをされた日からあっという間に3日が経ち、
コウナが1日社長になる日がやってきた。

朝早くからアテナはすでに会社を出ていて、
その日の朝礼からコウナが社長としてメンバーの前に立つ。


初期メンバーはアテナとコウナを除くとたった20名程。

この企業、名は「ゼウス」。
神界最高神であり、アテナの父でもあるゼウスから名前を貰い、人だけでなく、能力をもって生まれた者達も守る意味を込めアテナが名づけた。


ゼウスのメンバーは様々な世界からアテナがスカウトし呼んできた実力のある者たちばかり。
だが何故か男性ばかりで、少しむさ苦しさも感じるが
能力持ちは皆顔立ちが整っている法則でもあるのか、
それぞれタイプは違えどきれいな顔をしている。


だが、群を抜いてコウナが一番美しいと言える外見で、
顔だけでなく、スタイルもどこか女性らしさを感じさせつつ、男性という中性的な存在であった。

その為、密かにメンバー内ではコウナをお姫様扱いするところがあり、仕事をする上でもコウナと共につく者たちはコウナの騎士に成り代わる。



そんなコウナが恥ずかしそうに皆の前に立ち、もじもじと服の裾をいじっている姿は、メンバー全員カメラを持ち出し写真として残しておきたい気持ちでいっぱいだった。



「頑張って、コウナ」

「レムぅ…」


涙目になりながらレムに助けを求めるが、レムも代理とはいえ上に立つコウナがしっかりしなければいけないと考えており、背中をぽんぽんと押すと耳元で

「あとでご褒美あげますから、1日皆が頑張れるように声をかけてあげてください」


その言葉に顔を赤くして頷く。
そして、今までとは違うキリッとした表情に変わり


「皆、今日は一日アテナの代わりに俺がゼウスの社長として務める。至らないことも多いと思うけど、皆も遠慮なく発言してほしいし、手を貸してくれると嬉しい。…から…その…がっ、がんばるね…!!!」


出だしは良かったものの、結局最後はいつも通りのコウナの可愛さが出てしまい、なんとも締まらない結果となってしまったが、いつものアテナの朝礼に比べると
ピリピリとした雰囲気ではなく、皆和やかな暖かい雰囲気になっていた。


「俺も頑張るから!コウナちゃんも頑張ってくださいね!」

「俺も俺も!大変だったら言ってくださいよ、手伝います!」


皆が口々に優しい言葉をかけてくれる。
その光景が今まで何を思われているのだろうかと、
怖く感じていたコウナにとって、メンバー皆に対しての
イメージががらりと変わり、少し近づきやすくなった。


「…っぁ、ありが…とう…///」

照れながらも頬を赤らめ控えめにお礼を言うコウナの姿に、メンバー全員、この人を守っていこうと誓うのだった。



無事に朝礼も終わり、ひとまず社長室に戻るコウナ。
一緒に今日1日付き人となったレムも部屋に入る。


「コウナ凄いじゃないですか!アテナさんとは違う貴方らしい形で皆をまとめられましたよ」

「うん…なんだか…俺、皆がどう思ってるのかなって凄く怖くて自分で壁、作ってただけだったんだね…
皆すごく良い人だし、距離をとってた俺が本当に失礼だったよ」


「誰だって慣れない相手に心を開くのは難しいですよ。でも、何かをきっかけに少しずつ距離が近くなっていくものですから。それが今日この機会だったというわけですね。」


ふわりと優しくコウナを抱き寄せる。
コウナもそれに身を預け、自分よりも大きな胸に顔をうずめた。


「ん…やっぱりレムって落ち着く…なんでだろ…」


「お二人に会うまでは謎めいた話はあまり信じてきませんでしたけど…こうやって不思議なことばかり体験していると、前世でコウナさんと会っていたのかも、なんて思ってしまう時があるんですよ」


「ふふ、そうかもね?」


「おいくつでしたっけ?」


「んー…随分と数えていないからなぁ…でも…もう数百年は経ったと思うよ?」


「不思議ですね、まだ15,6の少年のように見えるのに…」


「まぁ…この体も本当の体とはいえないし…」


「一度器を変えた、とおっしゃってましたよね」


「うん、不老不死の一族はある一定の時期を過ぎると肉体が限界に近づいてしまってアース一族特有の病にかかるんだ。その病は発病してから1週間以内に新しい器(肉体)に魂を移動させる転魂の儀を行う。いつその病にかかるかは俺たち自身でも分からなくて…
急にかかるものだから、今まで一族の中にも、
その儀が間に合わずに死んでいった人もいるって聞いたよ」


「特殊な器なんでしたっけ?」


「転魂の儀に使う器を作る職人がいるんだ。その職人さんしかどうやって作るのかはわからなくて…」


「ではその方が亡くなってしまったら…」


「それは大丈夫。時間に捉われない異空間にずっといる人だから。ちょっと変わっているんだけどね、凄く良い人なんだよ。お酒が好きだからたまにお酒をもっていってあげるんだ」


「はぁ…」


レムも触りだけしか聞いたことがないコウナ自身のことについて、興味はあるが、聞いても聞いても理解しがたい話しか出てこない。自分の知らない世界で生きているコウナのことは、とても身近にいるのに、離れたところで生きているように感じていた。
そのことが少し寂しく感じ、ぎゅっと抱きしめる力を強める。


「どうしたの?レム…」


「…コウナ、ご褒美欲しいですか?」


「え…で、でも…お仕事始まったばっかり…」


「朝礼のご褒美ですから…またちゃんとできた時はそのときにご褒美をさしあげますよ」



レムの言うご褒美。これは数ヶ月前からコウナはもらっているもの。
コウナが何か出来るとこれまで飴をあげていたレムだったが、コウナが今までよりももっと頑張ったから、
もっと凄いご褒美が欲しいとねだってきて
ついついかわいさのあまりあげてしまった。
それがたった数ヶ月でどんどんエスカレートしていった結果……

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あきゅろす。
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