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パラレルワールド
初めての社長
これはまだアテナとコウナが会社設立当初の頃のお話。


この頃のコウナは人見知りに近いものがあり、
会社の初期メンバーと仕事は問題なくこなすものの
今一歩仲良くなるということに関しては難しい部分があった。

そんなコウナをアテナはとても不安に感じていた。


しかし、そう思ってはいてもアテナにはやらなければならないことがあった。




「…コウナ、ちょっといいか?」


「なに…?」


改まって呼ばれたことに、何かあったのだろうかと
不安げな表情になるコウナに優しく頭をなでてやる。

「お願い事があるんだが、聞いてくれるか?」


「おねがいごと・・・?俺にできることなの?」

「できないことはないよ。ただ少しだけ難しいかもしれない」


その言葉に少し身構えてしまい、コウナは視線を反らす。

「私は3日後に神界に戻ってやらなければならない仕事がある。こちらの時間では1日程度だが、
その間会社の社長不在となると何かあった場合に問題が生じる。その為、副社長であるお前に、一日社長業務を任せたい。」


「俺が…社長・・・?」

突然のことにどう反応してよいのかと困惑した面持ちであったが、たった1日アテナの代わりに社員の指揮をとったり支援している人の元へ顔を出すだけで難しいことは然程ない。

だが、コウナにとって一番の難題はコミュニケーションにあった。


「仕事としては難しくはないし、お前だけに全て負担させるつもりはない。なるべく後に回せる仕事は私が片付けるし、分からないことは秘書のイリヤに聞けば良い。あいつは変態だが気も利くし仕事もできる。」


「おれ・・できないっ!」


俯いて完全に聞こうとしない体勢のコウナ。
この頃のコウナは、物事に対して拒絶の姿勢をとることが多かった。
神界に来るまでの間、コウナにとって辛い日々だったようで、その事がトラウマとなり神界で出会ったばかりの頃は話すことも一苦労だった。

アテナの根気のコミュニケーションのおかげで、
今では普通に話すこともできるし、ある程度なら
他人と交流することもできた。
しかし、やはり苦手なものは苦手なようで
”やらなければいけない”という状況になると
拒絶をしてしまう。


こうなってしまったコウナを説得するのはなかなか
難しいものだったが、最近アテナは気付いたことがあった。


「それなら…レムを付けてやろう。お前のサポート係として…それなら安心だろう?」


「レムが…?」


これまで俯いていた顔をぱっと持ち上げうれしさを隠し切れない表情で目を輝かせこちらを見る。
なんと素直なのだろうか。

レムとは会社の初期メンバーの一人で、
唯一コウナがべったり甘えている相手である。

コウナ曰く、レムは懐かしい匂いがするようで
昔の友人か何かに似ているのだそうだ。
本人も何に似ているのかははっきりと思い出せない
ようだが、全く知らないものたちよりは心を開きやすい
ようで、仕事をする時も食事や寝るときも
レムと一緒が良いと希望してきた。


レムもレムでコウナのことを気に入っており
コウナとは違う感情を抱いているようだが
今のところ問題はない為に二人は常にペアとして行動してもらっている。


レムを部屋に呼ぶとすぐさまコウナはレムに抱きつく。


「レム〜〜!!また一緒にお仕事できるよ!」

「ふふっ、コウナと一緒に仕事出来て俺も嬉しいよ。
最近別々が多かったからね」


対能力者の仕事の為、それぞれの力に見合った仕事を配分する為、絶対この人と一緒に仕事をする、ということは難しい。
なるべく一緒にしてやることは出来ても常にパートナーとして過ごすことは出来ないのだ。

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あきゅろす。
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