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パラレルワールド

カランカラン、と少しレトロなベルが鳴る。
ここは、隠れ家的オカマバーではあるものの、その界隈では有名なバー。

男性が好きな男性が、気の合う一晩限りのパートナーを見つける為にやってくることはしばしば。

そしてまた、コウナの存在はこのバーの広告塔でもあった。




-自分の人生を投げ打ってでも欲しくなる男がいる-




どこから流れたか分からないその噂を聞きつけてやってくるお客も多い。
そして今宵のお客もまた、その噂を聞いてやってきたのだった。



「…となり空いてる?」


「…?埋まってたらここにいる訳ないでしょ」


「決まり文句だよ」

「10点。」

「厳しいなぁ〜」

参ったな〜と言いながらも余裕の笑みを浮かべる男。
20代後半だろうか。

ちょっとイケメンだから誘えば皆ついてくるって思ってるタイプ。

そんな事を思いつつコウナはグラスの中の酒をぐっと飲み干す。


「おっ、いい飲みっぷり。次おごらせてよ。」

「結構。俺は気に入った相手にしかおごって貰わない主義だから。」

「さすが。広告塔だけあってなかなか落ちませんなぁ」

「店に来て1分少々で落ちる馬鹿男がいてたまるか。」

「ふぅん…でも、別に好きになってって言ってるわけじゃないよ。ここにいるやつら殆どそうだろ。
今日の寂しさを忘れたいからセックスしよう。そんなのばっかりじゃないの?」

「…あんた本物?それとも冷やかし?」

「どうだろうね」




せっかく酔いが回ってきたというのに、このあんぽんたん勘違い男のせいでなんだか酔いが冷めそうだ。



「ママ、お勘定ー」


「あら、帰るの?」


「隣のやつがむかつくから。」


「あんまりはっきり言うなよ」


ぷいっと男から顔を背け万札を数枚置いていき

「残りはまた明日の分に回しておいてー」

「はいはい。またいらっしゃい」


またカランカランとレトロな音が店に響いた。

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あきゅろす。
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