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パラレルワールド
とあるバーにて

カラン、と音をたて氷がとける。
薄暗い店内にはジャズが流れ、大人の空間を生み出していた。

カウンター席で一人、どこか寂しそうな背中をした人が一人。
淡い金色の髪が肩からさらりと流れ落ちる。
小さなため息が微かにもれるが、店内のざわざわとした声でかき消される。


一見、少女のようにも見える背中の持ち主。
だがここは様々なお酒を提供するバー。
もちろん未成年は入れない。

そして、このバーは女性禁制。
そう、オカマバーである。



また小さなため息をついたこの客にバーのマスターが声をかける。


「あんたそれ何杯目よ。あんまり飲みすぎてぶっ倒れないで頂戴よね?」

少し太った女性とはいいにくい見た目だが、誰よりも綺麗に着飾ったマスターは、この常連客の飲むペースを気にしているようだ。


「ぅ、るさい…飲んでなきゃやってらんないんだもん…」

「あんたまた振られたの?振られるたんびにこの店くるわよねー嫌だわ、陰気くさい。」

「こういう客を慰めてあげるのもママの役目でしょー!?」

「あーあー…始まったわ絡み酒。ちょっとぉ〜誰かこの子相手してあげてよー」

常連ばかりのこの店では少し有名なこのお客。
名前はコウナ。
どこかの国のお姫様のような見た目だが、れっきとした男である。


女性でも長いと感じる程の透き通った髪を
誰も相手にしてくれないといじけて編みこみ始める。


このコウナこそ、この不思議なパラレルワールドの主人公である。

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