第一分室 肆
恋と憧れとA
「ユーリ、あの…」
「ん?どうした、エステル」
後ろから声をかけたエステルに、ユーリは振り向いて応えてくれる。
時には、カロルやリタにするように頭を撫でてくれることもある。
そんな何気ないことがとても嬉しくて、 幸せで。
旅に出るまでは、フレンが好きなのだと思っていた。
フレンと話すのは楽しかったし、一緒に過ごせる時間があることはとても嬉しかった。
けれど。
それだけ、だったのだ。
ユーリが相手だと、何気ない言葉や仕草のひとつひとつに心がざわめいてしまうのに。
フレンに対する気持ちは、恋ではなかったのだろう。
フレンは美しい金の髪に、端正な顔立ちをしている。
その立ち振舞いは、正に物語に出てくる騎士そのもので。
そんなフレンに、エステルは憧れていたのだ。
それは幼恋。恋に対する憧れ…。
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