第一分室 肆
涼やかな清香A
「お。何だか良いニオイがするな」
立ち上る湯気が漂わせる香りに誘われたのか、スパーダがそばに来ていた。
「スパーダ君。よければスパーダ君も一緒にどう?」
にこやかにお茶に誘うアンジュに、スパーダは苦笑する。
「紅茶なんてオレの柄じゃねぇよ」
柄ではないとスパーダはそう言うが、生まれを考えればそれこそ美味しい紅茶なんて飽きるほど飲んでいそうだ。
「美味しいのに。
…でも、確かにスパーダ君は紅茶って感じじゃないかなぁ」
「まぁ、そりゃそうだな」
アンジュも、無理に誘うことなく微笑んでいる。
そんな軽口を叩きながら、スパーダは空いていたアンジュの隣に座った。
すると、何か良い香りが感じられた。
ふわりと香る、良い香り。
けれどそれは、紅茶の香りではなくて―
「アンジュ。他にも何か、飲んでたか?」
「いいえ?
わたしが飲んでいるのは、これだけよ?」
アンジュは手に持っているカップを示しながら首を傾げる。
そんなアンジュの返事を聞きながら、スパーダは感じた良い香りの正体を探ろうと周囲を見回した。
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