第一分室 肆
涼やかな清香@
夕食を食べ終え、ようやく人心地ついた時間。
アンジュはひとり、静かに紅茶を飲んでいた。
食後の穏やかな一時。
本を読もうかと思い、持ってきてはいたのだが、疲れているのか内容がすんなりと頭に入ってこない。
思えば、ここ連日は厳しい戦いが続いた。
最近の強行軍が祟ったのだろう。
いつもより早い時間ではあるのだが、ルカやエルマーナはもう眠ってしまっているらしい。
けれど、今日は穏やかな晩だ。
きっとみんな、良く眠れるに違いない。
必要だったとはいえ、無理をさせてしまったのは事実。
特にアンジュが悪いというわけではないのだが、ごめんね。と、内心で謝りつつ静かにカップを傾ける。
華やかでいて、それでいてどこか落ち着いた紅茶の香りが身体に染み渡っていく。
「ふぅ…」
ため息と一緒に、溜まっていた重苦しくなるような疲れを吐き出すと、心なしか身体が軽くなったような気がした。
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