第一分室 参 苦さと甘さとA 「本当だって。 オレ、ティアが料理当番の日はいつも楽しみにしてるしな」 「あ、ありがとう…」 ぎこちなくお礼を言いながらもティアが喜んでいるのが分かる。 その間にもケーキはゆっくりと切り分けられて行き、お皿に載せられてルークの前に置かれた。 「どうぞ」 目の前に置かれたケーキに、待ち兼ねたと言わんばかりにフォークを手に取る。 「ん。いただきます」 ティアがお茶の用意をしている間に、さっそくルークはケーキを口に運ぶ。 「うん。うまいよ、ティア」 本当に美味しそうに食べてくれるルークに、ティアの表情も和む。 「良かった。 もう一切れ、食べるかしら?」 もちろんだと言わんばかりに大きく頷くルークに、ティアは何処か嬉しそうな様子で再びケーキを切り分け始めた。 ケーキを切り分けているティアを見ながら、ルークはどうしてこんなにティアのケーキは美味しいのだろう?と、そんなことを考えていた。 アニスが同じものを作ったなら、それはそれで美味しいに違いない。 単純に料理の腕前だけなら、おそらくアニスに軍配が上がると思われる。 けれど。 ルークには、ティアの方が楽しみなのだ。 [前へ][次へ] [戻る] |