第一分室 参 静穏な日々@ リーネの朝は早い。 鳥の声で目を覚ませるような穏やかなリーネ村の朝は、いつも穏やかだ。 今朝もいつものように鳥の声で目を覚ましたリリスは窓の外を見た。 とてもいい天気。絶好の洗濯日和だ。 身支度を整えて、いつもしているエプロンを身に着ける。 リリスがまず初めに行うのは朝食の準備だ。 料理好きなリリスは、朝から料理をするのがちっとも苦にならない。 「あ。おはよう、おじいちゃん」 朝食の準備をしている頃に起きてくるのは祖父のトーマスだ。 「おはよう、リリス。今朝も早いな」 「うん。朝ごはん、もうすぐできるから。もうちょっと待っててね、おじいちゃん」 手早く朝食を作り、トーマスに出した後にはリリスにとって一日のうちで最大の難関が待っている。 それは・・・兄のスタンを起こすことだった。 「お兄ちゃん、起きて?」 いつものことだが、リリスはため息をついた。 どうして兄はこうなのか・・・ そのままでいると昼まで・・・下手をすると夕方まで寝続けていることがあるのだ。 「お兄ちゃんっ!!」 耳元で怒鳴られても起きない。 スタンの寝起きの悪さは三国一なのではないだろうか。 「・・・今日も起きない、か。仕方ないわね・・・」 その三国一寝起きの悪い兄を起こすには『あれ』が一番早い。 あらかじめ用意しておいたおたまとフライパン。 手馴れた様子で、構える。 「秘技。『死者の目覚め』っ!」 騒音・・・と言っても差し支えのない音が止むと、ようやくスタンが起きるのだ。 「・・・おはよう、リリス・・・」 まだ眠いのか、スタンは半分くらいぼんやりとしている。 それでも、ようやく起きだしたスタンにリリスはにっこりと笑った。 「おはよう、お兄ちゃん。さ、早く朝ごはん食べちゃってね」 [前へ][次へ] [戻る] |