第一分室 弐 花言葉をあなたへ@ 旅の途中で訪れた、小さな町。 そこは、花が咲き誇る町だった。 さまざまな花とその香りが町全体を埋め尽くしている。 町中を覆う花の香り。 穏やかな今の季節は、特にたくさんの花が咲いている。 「きれいな花だね・・・ね。リッド!」 「ん?ああ・・・そうだな」 ファラは、やはり花が気になるのか、しきりに並んでいる花を見つめている。 リッドはあまり興味がないのだろう。 楽しそうなファラの横で、ぼんやりと空を眺めている。 しかし、どんなに退屈そうにしていても、ファラの隣を離れないのがリッドらしいとも言えた。 咲き誇る花々。ラシュアンも花は多いけれど。 色ととりどりに咲いている花は、いつまで経っても見飽きない気がする。 「あ。何か書いてある!」 花の名前が書いてあるプレート。その下に花の名前以外にも何かが書かれている。 「これは・・・『花言葉』?」 花はひとつひとつ、象徴する言葉を持っている。どうやら、それが書かれているらしい。 「いろんな意味があるんだね・・・すごいね、リッド!」 「そうだな。 まさか花に意味があるなんて、思いもしなかったぜ・・・」 ラシュアンでは、あまり花言葉は聞かない。 そのためか、2人ともあまり花言葉についての知識はない。 だからこそ、新鮮であるのだが。 「これだけいろいろな意味があると、プレゼントするときにも迷っちゃいそう。 普段お世話になっている人なんかに花を贈るときに、意味を考えて渡したくなっちゃうし」 もちろん、考える楽しみもあるからファラとしては嫌ではない。 花言葉の意味を添えて。大切な誰かに、花を贈りたい。 日ごろの感謝の意味をこめて。 「そうだ、リッド!ちょっと待っててね!」 「どこ行くんだ?」 「ちょっと花を探してくる!」 思いたったら即行動。そんな行動的なファラには慣れているからこそ、リッドはファラへの気遣いも忘れない。 「気をつけて行ってこいよ」 [前へ][次へ] [戻る] |