第一分室 弐 悪い夢を見た朝はA 起きるには早い時間でも、宿の人たちはもう動いている時間だった。 人の動いている音。 ひとりきりではないのだと、実感できる。 食堂に降りると、やはり誰もいなかった。 静かな空間。 静かすぎて、不安になる。 「は…」 溜め息をつきかけて、アニーは慌ててそれを飲み込んだ。 溜め息なんてついたら、きっともっと気が重くなってしまうだろうから。 早く、誰かが来てくれればいい。 「アニー。今朝は早いんだな」 聞き慣れた声がして、アニーはドアの方を見た。 そこには、剣を持ったヴェイグが立っていて。 「おはよう、アニー」 「あ、おはようございます。 …ヴェイグさんも、早く起きてたんですか?」 「…少し前に」 どうやらヴェイグは、朝の鍛練をしていたらしい。 [前へ][次へ] [戻る] |