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第三分室
蝕 3
遠のいていった意識が戻り、太公望は目を覚ました。
「朝…?」
ぼんやりと、辺りを見回す。
目の前は紅くない。
普賢と紅い月を見ていたのは、玉虚宮にあった太公望と普賢の部屋。
しかし、ここは…
西岐の執務室だ。
「何だったのだ、今のは…」
紅い幻を振り切るかのように、頭を振る。

「望ちゃん、目が覚めた?
…だいぶうなされてたみたいだけど…大丈夫?」
「…普賢」
いつの間にか執務机の傍らには普賢が立っていた。
心配そうに覗き込んでくる瞳は、いつもとまったく変わらない。
太公望がぼんやりと普賢を見上げると、普賢は淡い笑みを見せた。
「…大丈夫だ」
「そう。よかった。安心したよ。望ちゃん…」

不意に普賢の姿か、存在が薄くなったように感じられた。
そこにいるのに、いないような。
触れたら、儚く消えてしまいそうな…

「僕は、信じてる。
今は、見守ることしかできないけど…」
「普賢、何を…!」




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