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第三分室
蝕 2
紅。一面の紅。
息を呑むほどに美しくて、どこか禍々しい一面の真紅。
そんなところに太公望はいた。

紅のほかには何もない。
遠くは霞がかかったように何も見えなかった。
どうしてこんなに紅いのか。
考えてもわからない。
こんな場所は知らないし、見たこともない。

(何だ…?)
微かに漂う香り。まるで、鉄のような…
(鉄…?)
鉄ではない。これは…
(血の…におい)
そう悟った瞬間、太公望の視界の端に、何かが映った。
(人…か?)
人影。
自分とあまり変わらない背格好の。

立っていたそれが傾いだのを見て、太公望は慌てて駆け寄った。
その場に近付くとともに、強くなっていく血のにおい。
そんなことには構わず、ようやくそこに近付く。
そこに倒れていたのは。

「普賢…っ!」
一面の真紅。
目の前も、どこも、かしこも。
なぜこんなに紅いのか。

それを知覚した瞬間。
太公望の意識はそこで途絶えた。



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